アズカバンの囚人
□ups and downs
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「・・・ありがとう・・。皆、アニメーガスが珍しいのかしら・・・?」
「あーー・・・。そう、だな。そういうことにしておくよ。
君は優しいから変身してみてくれと言われたら断れないんだろうけどな、あんまり慣れないことばかりするものじゃない。ただでさえ人と打ち解けるのが苦手なのに」
「・・・そうね、わかったわ・・。心配してくれて、ありがとう。」
「いや、わかればいい・・・」
ドラコはフォーラの事をチラリと見た後で先程フォーラが思い出していたのと同じ言葉を思い出していた。あの時は彼女の様子も少しよそよそしくなっていたように感じたが、今はそんな風には全く感じない。やはりあれは見当違いで、フォーラは何も気づいていなかったのだとドラコは思い直したのだった。
それから後二日でホグワーツともしばらくお別れとなったその日、フォーラは廊下でばったりハリー達3人とフレッド、ジョージに出会った。彼らはフォーラを見るなりアニメーガスだなんて知らなかった、すごいじゃないかと彼女を褒めた。
「ありがとう、皆・・・。」
「フォーラは変身術も得意だしね。何かセンスがあるのかな」
ハリーにそう言われてフォーラは照れてしまって少し顔を赤らめてはずかしそうに身を竦めた。
「そんな・・・。でも、嬉しいわ。ありがとう。」
彼女のハリーへの微笑みに見とれていたロンはボーッとしてしまっていたようで、ハーマイオニーに肘で脇腹を小突かれていた。
「・・・そうだわ、私、ジョージにお話があって・・・。
少し付き合ってくれると、嬉しいのだけれど・・・ダメかしら?」
フォーラは少し緊張した面持ちで彼にそう尋ねた。
「ん?俺か?いいぜ、丁度暇してたんだ」
にこやかにそう答えたジョージは内心余裕がなかった。
(フォーラに呼び出されるなんて舞い上がっちまうな。アニメーガスの事だろうって何と無くわかってても嬉しいんだから俺って単純だよな・・・
にやけてないといいんだけど)
ハリー達から離れて行く時、彼はフレッドに背中を軽くバシッと叩かれた後でフォーラについて行ったのだった。
日陰になっている中庭まで来ると、フォーラはベンチに座るようジョージに促した。丁度今は自分達以外誰もいない。
「ごめんなさい、急に呼び出してしまって・・・。」
フォーラはジョージの隣に座ると彼の方を向いて真剣な表情で話した。
「あ、・・・あのね、私・・・。ジョージにずっと黙っていたこと、話さなきゃと思っていたの。だから・・・。」
「気にしてくれてたんだな。でも、そんな無理に話さなくてもいいんだぜ?」
彼の言葉にフォーラは首を横に振った。
「ううん、ジョージにはその事で心配をかけてしまった時期もあったし・・・。
でも、私、アニメーガスになって自分がした事、後悔してるわ。それに反省もしてる・・・。」
フォーラはアニメーガスになって何をしていたか、ジョージに掻い摘んで話して聞かせた。
ルーピンを元気付けたくて満月の夜だけ彼の元を訪れたこと、段々罪悪感を覚えたこと、彼に猫が自分だと暴露たくなかったこと。
それを聞いた後でジョージは納得したようだった。
「そういうことだったのか。」
フォーラは随分不安そうな様子でジョージの顔を見た。ドラコだけでなく迷惑をかけてしまった彼には話さなければならないと思っていた。ドラコは自分を受け入れてくれたが、ジョージもそうとは限らない。
「・・・私、結局後からいけないことだってわかるなんて・・・。ジョージは心配してくれていたのに、相談もしなかったし、私・・・。」
フォーラは段々伏せ目になって言った。しかしジョージは彼女の頭をポンポンと撫でると彼女に顔を近づけて励ました。
「フォーラはルーピンの力になりたかっただけだろ?ルーピンもその事は許してくれた。何の問題もないし、そんなに気に病むことじゃない。
それに、フォーラは自分の中で戦ってたんだ。そりゃ少しは相談くらいして欲しかったってのはあるけど・・・。あの時のフォーラは随分疲れてたから。でも、よく頑張ったな」
彼のそんな言葉にフォーラは顔を上げた。
「・・ジョージ・・・。」
フォーラの顔が近くてドキリとしたが、ジョージは笑って少しフォーラから顔を離した。