秘密の部屋

□Chiffon cake
2ページ/8ページ

すると、そのうち屋敷しもべ妖精の方がこちらに気付き、皆が皆フォーラに向かって頭を下げたり、膝をちょんと折って宮廷風の挨拶をしだしたので、彼女も慌てて挨拶した。
そして二、三人の屋敷しもべ妖精たちが嬉しそうにこちらへせっせと駆けて来て、「どうかなさいましたでございますか?」とフォーラに尋ねた。

「あの、……実は今日、厨房を少し借りたくて。少しのスペースでいいの、よかったら、なんだけれど……」

遠慮がちにそう尋ねると、屋敷しもべ妖精からは快諾の声があった。

「滅相もございません!どうぞお使いになってくださいでございます」

「ありがとう、助かったわ。」

屋敷しもべ妖精はとても嬉しそうにするのでフォーラは最初ここへは入り辛かったという事はあえて言わないでおいた。
それからは彼らに「お嬢様は朝食をまだとっていらっしゃらないはずなので、ここで用意いたします」と言われ、そういえばそうだったと思い直し、フォーラはお言葉に甘えてから作業に取りかかる事にしたのだった。

その頃、グリフィンドールの男子寮ではハーマイオニーがハリーとロンにさっさと起きるよう促し、二人にプレゼントを投げ渡したところだった。

「私、もう一時間も前から起きて、煎じ薬にクサカゲロウを加えたの。完成よ」

ハリーは途端に目が覚めて起き上がった。

「ほんと?」

「絶対よ。やるんなら、今夜だわね」

どうやら遂にポリジュース薬を試してドラコに『スリザリンの継承者』について尋ねる時が来たようだ。

その後、朝食を食べ終えたフォーラは、先程の屋敷しもべ妖精に卵や砂糖等の材料を分けてもらっているところだった。

「これとこれと、これ、できれば少し貰いたいんだけれど、いいかしら…?」

「どうぞ、御自由に御使いください。不自由があればなんなりと!」

膝をちょこんと折り曲げて言う彼らの目は期待に満ちているが、フォーラは仕事の邪魔になってもいけないと思い、気を使わなくていい、と一応念を押しておいた。それからシフォンケーキの作り方の載ったページを開き、エプロンも借りて作業にとりかかった。

昼前、ドラコはフォーラがまだ帰らないことを少しばかり気にかけていた。昼食に顔を出さないと言っていたわけでもないし、一体彼女は何処にいるのか。一応はスネイプの所にいるということになっている筈だが、本当のところはどうか分からない。それに彼女は何か隠して作業したがっていたため、彼女の居場所を突き止めるのは適切ではないだろう。
ドラコは諦めたようにため息をつくと、昼食を食べる前にその辺をうろつく事にしたのだった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ