秘密の部屋

□need
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「えーと……ドラコ、そんなに落ち込まないでよ!ね!」

「そうよ、初試合なんてそんなものなんだから」

昼を迎えた大広間の天井は雨を映し出している。外窓を雨粒が打つ中、生徒たちは少し遅めの昼食をとっていた。

「別に落ち込んでなんかないさ」

スリザリンのテーブルは妙に沈んでいて(グリフィンドールがはしゃいでいるからそう見えるだけかもしれないが)、中でも一番落ち込んでいたのはドラコだった。
スリザリンはグリフィンドールにクィディッチの試合で負けたのだ。それも彼のせいで。パンジーとルニーが慰め、彼は声こそ出すものの顔を上げなかった。

(ポッターに負けた。僕のすぐ近くにスニッチがあったのに。とんだ恥さらしだ)

悔しくて何も話したくなかったし、どうにもできない苛立ちが彼の中に渦巻くのがわかった。正直、グリフィンドールなんてすぐに負かすことが出来ると思っていた。だからあんなに余裕があったし、試合中に何故だか執拗にブラッジャーに狙われながらもそれを避け続けるハリーを嘲笑う事が出来ていたのだが、それが逆にハリーに隙をつかれ、自分のすぐ近く、ドラコの頭上にあったスニッチを先に掴まれてしまった。

(あいつがブラッジャーに片腕を折られて、終いにはロックハートにそれを骨抜きにされたっていう事が唯一の報いだ)

ハリーはブラッジャーに折られた腕とは反対の手でスニッチを掴んだ後、意識もなく地面に倒れ込んだ。目を覚ますとそこはまだ競技場で、彼の目の前にはロックハートがいた。そしてその周りには心配する選手、生徒が集まっていた。
腕を治すと言い張る目の前のロックハートにハリーは何度もやめてくれと懇願した。しかし彼は聞く耳を持たなかった。御蔭でハリーの右腕はゴム手袋のように だらっとした骨抜き状態になってしまったのだった。
しかしそれがドラコにとっては笑えることでも、そのハリーの怪我の代償がそうでない事ぐらいは彼もよく判っていた。片腕が折れているのに、無理にスニッチを掴んだ。彼の勝利は息をのむような素晴らしさだったのだから。
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