秘密の部屋

□It seems to be a vein
2ページ/4ページ

数日後、三人がポリジュース薬の製作過程の載った禁書の貸し出しに成功したその日の夕食時、ハリー達は空腹も満たされ大広間から談話室へ帰ろうと大広間の扉を出たところだった。

「…あ、…あれは………フォーラ?」

廊下でハリー達が目にしたのは、上へ続く階段の目の前の床に全く動かずうずくまり、鞄の中身をぶちまけてしまっているフォーラの姿だった。図書館からの帰りなのか床には数冊の本が散らばっている。

「フォーラ!」

どうして彼女が床に倒れているのかを考えるより先に、ハリー達は直ぐさまフォーラの元へ走った。とにかく彼女の意識があるかが心配だ。

「フォーラ、大丈夫!?フォーラ?」

ハリーの声がするとフォーラはぴくりと反応して倒れていた身体をゆっくり起こし、ハリー達のほうを見た。何故か彼女の顔は、みるみる赤くなっていく。

「、……あ、ハリー、ええと、あの、こんばんは……!」

どうやら怪我などは無いようだ。今の状況が恥ずかしいのか、フォーラは慌てふためいて立ち上がり、ローブの埃を掃いながら挨拶した。

「フォーラ、あなたどうしたの?大丈夫?」

ハーマイオニーが心配して声をかけながら床に落ちている本を一冊拾いあげると、フォーラは赤くした顔を隠すように俯き、急いで散らばった本を拾い集め始めた。

「えっと、私、急いでて、まだ夕食をとっていないから、それで……階段を踏み外して、」

要するに、彼女は階段で転んでしまったわけだ。ロンはフォーラが何気にドジな所もあるというのをあまり知らなかったし、彼の前でのフォーラはこんな一面を見せることもなかったので意外だった。
急いで鞄から出たものを詰め込んでいるフォーラの近くでロンがふと彼女から視線を外すと、フォーラから少し離れた所に割れたインク瓶が黒く小さな水溜まりを作っていることに気がついた。

「あー、割れてる」
ロンがそれに近づいてしゃがみ込み、割れた瓶の破片を一つつまんだ。破片に触れる前に杖で「レパロ」と唱えて瓶だけでも直せばよかったのだが、彼はそれをうっかり忘れていた。

「アイタッ」

フォーラがハーマイオニーから急いで本を受け取ってお礼を言ったところでロンの声がした。彼は案の定指を軽く切ってしまい、人差し指からツーッと赤い血を流していた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ