短編小説
□初恋〜まだ始まらない恋〜
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何のための、どういう仕事なのか、そこに集められた者に、一切説明がなかった。
「この写真、何に使うんだろうね。」
「あの子、誰?」
「なんか…すごい先輩がいるんだけど…。」
口々に言っている。
その中に見つけた、あの初恋の相手。
“やっぱり、あの子だ。”
何度が見かけたことはあったが、じっくり顔を見ることがなかったし、名前も知らなかった。
“まっすーと仲がいいのかな。”
誰かが、
「君、誰?名前は?」
と聞いていた。思わず聞き耳を立てる。
「手越祐也です。よろしくお願いします。」
“手越祐也…か。”
「シゲ、どうした?ぼんやりして。」
声をかけてきたのは、小山だった。
「えっ?あぁ…いや…。あの子、あんまり見たことないなぁと思ってさ。」
「あぁ。まだ、一年も経ってないらしいよ。」
「えっ?事務所に入って?」
「うん。」
「へぇ〜。」
そして、その後、このメンバーでグループを結成してCDを出すから、と告げられた。
ほとんどがグループに所属しているのに、何の前触れもなく決定事項として告げられたのだった。
「仕方ないよ。決まったことみたいだし。僕たちは何も言えないよ。」
と、みんな諦めるしかなかった。
それよりも、これからのことを考えなくてはいけない。
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