NEWStory 2
□取材日
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「いただきます。」
山下は、嬉しそうに食べ始める。
「うん、やっぱり美味しい。」
幸せそうな笑顔を小山に向ける。
「その笑顔、見れるだけで幸せになれるよ。」
山下に美味しいと笑顔で言われた小山も、笑顔で答えた。
「毎日、料理を作って出す人の気持ちって、こういう感じなんだろうなぁ。」
「こういう感じって?」
「食べてくれる人の笑顔が、ご褒美っていうこと。それだけで、十分だもん。」
「じゃあ、俺の笑顔がご褒美になったんだ。」
「うん、ご褒美になった。」
「こんな笑顔がご褒美になるなら、いくらでも見せるよ。」
「最高の笑顔は俺に取っといてね。」
「うん、了解。あっ、でもファンの人は?」
「あっ…そこが俺たちの悲しい性だよな。ファンのみんながいなきゃ俺たちはないし、俺たちも出会わなかったし。ともひさの笑顔を独り占め出来ないんだな…。」
「うん…。でも、今は独り占めしてるじゃん。それでいいじゃん。」
「そうだなぁ。」
「ごちそうさまでした。」
「なんか嬉しいな、全部美味しそうに食べてくれて。」
「だって美味しかったもん。」
「ありがとう。片付けよう?」
「うん。ちょっと待って。俺、そっちにまわるから。
そしたら食器、渡して。」
と言って、山下がキッチンにまわった。
「うん、いいよ。」
「ちょうだい。」
「はいよ。」
「洗うの手伝ってね。」
「うん。」
洗い物を始めた山下が、今日のスケジュールを小山に聞いた。
「今日さぁ、取材だけ?」
「うん、だと思ったけど。いくつあったかな?忘れちゃったけど。」
「じゃあ、一日みんなと一緒なんだ。」
「うん。あっ、俺、30分ぐらいしたら、一回、うちに帰るわ。」
「えっ?あと30分しかいないの?」
一瞬、手が止まる。
「(笑)また後ですぐ会えるじゃん。」
「そうだけどさぁ、…なんか…つまんない…。」
「そういうこと言わないで。帰れなくなっちゃうじゃん。」
「着替えとか持ってくればよかったのに…。そしたら一緒に仕事に行けたじゃん。」
「いやだってさぁ、それじゃ、いかにも今日はHしますって感じじゃん。」
「それは自分が、そう思ってるから、そう見てるかもって思うんじゃん。堂々としてればいいんだよ。俺はそう思うけど。」
「…、怒ってる?」
心配になって、山下の顔を覗きこむ。
「怒ってないよ。ただ…」
山下は、洗い物が終わり、食器を拭き始めた。
「ただ…なに?」
「もっと一緒にいたかっただけだよ。それだけ…。」
少し怒ってるような表情の中に照れた表情が入り雑じっている。
「ともひさ…。」
「なに?」
手を止めずに返事をする。
「ごめんね…。一緒にいたい気持ちは一緒なのに、俺が変なとこにこだわったりするから、怒らしちゃったね。」
「…怒ってないよ。たぶん…俺は、けぃに甘えてるんだ。だって、けぃは何でも許しちゃうんだもん、俺のこと…。」
「だって…許せるから…、しょうがないじゃん。」
「そんなこと言ったら、どんどん図に乗るよ、俺…。」
ニッコリ笑って言った。
「いや、ともひさは、図に乗ったりしないと思う。」
拭き終わった食器をしまいながら小山は言った。
「絶対甘えて、どんどん図に乗るよ、きっと。」
「俺に甘えるのは、全然かまわないから(笑)」
「本気にしちゃおぅっと。」
「(笑)」