短編小説

□桜のキミ
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卒業式の式典がすべて一通り終わると、教室の隅や廊下などで友人との別れを惜しむ者や、案外あっさりしているのか、即座に学校をあとにする者など様々である。


また、式典に出席した下級生たちの思いとしては、部活で厳しかった先輩ではあるが、卒業するとなると、やはり、どこか寂しさがあった。


さんざん喝を入れられ、怒鳴られた後輩たちが、それでも大切なことをたくさん教えてくれた先輩との別れを惜しむ姿が、校舎内や部室などで見受けられた。


そんな中、みんなの輪から離れ、校庭の隅にある桜の大木の下で、幹に手を触れて何かを思い出すようにしている卒業生がいた。


“先輩…僕も卒業です…”


一方、校舎内を走り回り、誰かを探している下級生がひとりいた。


教室や部室にも行ってはみたが、目当ての人物はどこにもいなかった。


「卒業式にはちゃんと出ていたんだから、学校にいることは間違いないんだけどなぁ…。もう…帰っちゃったのかな…先輩。」


昇降口から出てきて、校庭を見渡す。


「やっぱりいない…。どこに行ったんだろう。もう帰っちゃったんだな、きっと…。」


諦めて校舎に入ろうとしたとき、校庭の隅に誰かがいるのを見つけた。


「あっ、いた…」


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