短編小説

□バーチャル
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薄暗い、広い部屋に、全身がすっぽりと入る椅子に色々な装置があり、まるでカプセルのようなカバーがついている。

バーチャルの世界に誘う為のものなので、座り心地はバツグンにいい。

プログラムされたバーチャルな世界からもうすぐ戻る。

性能が以前に比べてかなりよくなったので、戻るときのプログラムもごく自然に、夢からさめるように戻ってくる。



プログラム終了のシグナルがなり、カバーが静かに開いた。

眠りからさめるように目を覚ます…。



「いかがでしたか?バーチャルの世界は…」

案内人がバーチャルの世界から戻ってきた6人に話しかける。

6人すべてが同じバーチャルの世界に行っていた。



「はぁ〜。」

とため息をついて最初に口を開いたのは小山だった。

「Pとあんなことになるなんてねぇ(笑)。」

「…びっくりした。なんか…恥ずかしくなってきた。」

小山の隣のマシーンにいた山下が、現実に戻るに連れ、バーチャルの世界を思い出して急に恥ずかしくなってきたのだ。

「(笑)。俺は、バーチャルじゃなくても全然かまわないけど。」

「そんなこと言っていいの?」

「だってあいつ、まだ起きてないよ。はっきり…」

そうなのだ。

6人全員戻ってきたと思ったが、まだ、手越がうつろな目をして完全に戻っていなかった。
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