短編小説
□OUT STORY 2
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俺は、てっきりデビューするなら4人でするものだと思い込んでいた。
だから、この9人でデビューするからと告げられたとき、正直、不愉快だった。納得できなかった。
だって、半分以上は話したこともない人だし、まったく知らない子もいたから。
だから、あまり話をすることもなかった。
それでも、次第にこのメンバーにも情が湧いてきた。
このメンツで頑張っていこう、そう思えるようになってきた。
そんなある日、ふと気づいた。いつも俺を見て笑顔を見せるヤツに…。
俺より年上だけど、後輩という複雑な関係。
人懐こい笑顔を見せる小山。
笑顔につられて、俺も笑顔になる。
視線が気になり振り向くと、いつも俺を見ていた。
何故、そんなに俺をみているのだろう。
何かあるの?
小山が何を思って、そんなに俺を見つめているのかは、そのときはよく分からなかった。
別段、何かを言ってくるわけでもない。
いつも優しいし、何か言いたいことがあるわけでもなさそうだったし…。
でも、その小山の視線に気づいてからは、自分の中で何かが少しずつ変わり始めていた。
“どうしよう…なんでドキドキするんだろう…。これって…。だって相手は…。いや、違う!絶対に違う!そんなこと、あるわけない!”
自分の心の変化を認めたくなかった。
否定し続けた。
それでも、小山は何を言うわけでもなく、見つめてくる。
次第に笑顔で返せなくなっていった。