短編小説

□メインディッシュ
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俺、小山慶一郎。

いろんな仕事してるけど、一番新しい仕事にも最近ようやく慣れてきた。

一緒に仕事してる方たちに比べると全然だけど、それでも、俺なりに少しは進歩したんじゃないかと思う。

長年やってる別の仕事は、スタッフとの息もぴったりで、けっこう楽しめてる。



今日は打ち合わせがあった。

早目に終わる予定がなんだかんだで長引いて遅くなった。

自分の部屋のある階で止まったエレベーターを降り、バッグから部屋の鍵を取り出しながら廊下を歩く。

「あった。」

部屋番号をチラッと見て鍵穴に鍵を差し込んでロックを外す。

「ただいま…」

って言っても誰も待ってる人なんかいなくて、俺を待っててくれるのは猫ぐらいなもんだろう。

「おかえりなさい!」

と言う声に視線を落としたまま、

「ああ、ただいま。」

と言った。

……あれ?

“おかえりなさい”?

うちの猫はしゃべれるようになったのか?

いやいやいや、そんな話は聞いたことがない。

童話じゃあるまいし。

ふと玄関のタタキから視線を上げると、そこには猫…ではなく、人間の足…。

……ハイソックス?

しかもニーハイ。

……フリフリふわふわのスカート…

そしてエプロン…

…メイド服?

お玉持ってる…

…肩までのくるふわパーマヘア…

で…にっこり笑顔の女の子が!

あっ!!

「すいません!!部屋を間違えました!!」

脱ごうとしていた靴を慌てて履き直して部屋を出た。


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