短編小説

□てごち!
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「うぇ〜ん!いやなの〜!てごちがいいの〜!!うわ〜ん!!」

いくらなだめてもすかしても、一向に泣きやまない男の子。公園中に鳴き声が響き渡っている。

母親はすっかり弱り果てていた。

「困ったわねぇ…。手越くんと遊びたいって言っても、今日はお休みじゃないのよ、きっと。お仕事してるから忙しいのよ…。」


男の子の母親は、サッカーが好きな子供のために、ほぼ毎日サッカーボールを持って公園にやってきていた。

近所の同じ年くらいの小さい子たちも一緒になってボールを蹴っていたが、なにせ、小さい子たちなので、サッカーというより、ボールとじゃれているといったほうが正しいかもしれない。


昨日は、いつも一緒に遊んでいる子たちが来られなくてひとりだった。ボールを蹴る相手は男の子の母親。

その時、手越がたまたま近くを通り、ふらりと公園に立ち寄った。

そこでサッカーボールを蹴っていた男の子を見つけて一緒に遊んだのだ。

よほど楽しかったらしく、また一緒に遊びたい、と男の子が言ってきた。

それに対してうっかり、

「いいよ。今度また遊ぼうね。」

と、約束してしまった。

「あした、また、ここにくる?」

「うーん…約束は出来ないけど…」

約束は出来ないと言ったにもかかわらず、どうやら男の子はすっかりその気みたいだった。
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