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□愛しくて
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錦戸の部屋をあとにした2人は、タクシーを拾うため、広い通りまで歩いていた。
「ちょっと肌寒いね。」
山下が言った。
「大丈夫?これ、羽織る?」
そう言って、自分の着ていた上着を脱ごうとすると、
「いいよ。小山が寒くなっちゃうから。」
「大丈夫だよ。」
と言って、自分の上着を山下にかけてあげた。
「温か〜い。」
小山のぬくもりだ、と言って笑った。
「でもさぁ、意外だったね。リョウちゃんとまっすー。」
と、小山。
「意外だよね。まっすーは…なんか気になるのかなぁって思ってだけど、リョウちゃんのほうは…びっくりした(笑)」
「ねぇ、ホントに。どんな経緯なんだか…後でちゃんと聞かなきゃ(笑)。」
そういえば、と山下。
「手越…大丈夫かな?」
「まだ眠ってるかなぁ…。シゲ、うまくいくといいなぁ。」
「そうだね。ところでさぁ…これから、どうする?このまま自分ん家に帰っちゃう?」
少し淋しげな声で山下が聞いてきた。
「えっ?…俺…もうちょっと一緒にいたいな…」
照れながら小山は答えた。
「俺ん家…くる?ここからだったら近いし…。」
「いいの?」
「…うん。」
山下は恥ずかしそうにしながらも、ふわっとした笑顔をみせた。
小山は、山下のふわっとした笑顔が好きだった。
その笑顔をみていると、なんでも許せてしまう気がしてくる。
思わずじっとみてしまう。
「ん?どうかした?」
またふわっとした笑顔で聞いてくる。
「ううん、なんでもない。」
と、笑顔で返した。
ふと見ると、目の前の信号が、もうすぐ赤に変わりそうだった。
「P、走ろう!」
山下の手を掴んで走った。