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□よその家って自分の家とは違うにおいがする
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「アヤ、明後日の日曜うちに来ませんかィ?」


『………へ?』






#11 よその家って自分の家とは違うにおいがする






今日は金曜日。
学校に着くと、総悟くんから遊びのお誘い。




「大分前だけど山崎と一緒にあんたン家行っただろィ?
そのことで礼がしたいとかで、姉上に呼べって言われたんでさァ。」

『へ…へぇ……』




ほんと大分前の話だね。
日曜日かぁ…なんかあったっけ、とベビーピンクの手帳を開く。
あ、何もない。

私基本用事ないけど。




『大丈夫だよ、いける』

「じゃあ朝の十時に…二丁目のコンビニで。」

『…にちょーめのこんびに?』




どこそれ。

銀魂高校に転校してから早くも二ヶ月。
けれど未だ分かるのは、自分の家とこの学校と、友人三人の家。
あと近くのスーパーとペットショップ。
それ以上は大きな建物くらいしか分からない。




「……じゃあ学校の門前集合で。」

『面目ない…』




にちょーめのこんびにが分からなかったので、結局学校。




「ちょ、アヤ…」

『なにー退ー』




総悟くんが近藤君たちのほうへ行くと、我が親友退がこそっと話しかけてきた。
前にもあったな、こんなこと。




「あの…沖田さん家行くって…」

『あ、うん。姉上さんが呼んでほしいんだって。』

「そ…そう…」




姉上さんの名前を出すと、どこかほっとしたような笑みを浮かべた退。
お前はお父さんか。

でもそんな退に頬が緩むのを感じた。








そうして日曜日。
約束どおりの十時…ちょっと前。
淡黄色のTシャツに短いデニムズボンという組合わせで、鼻歌を歌う。

総悟くんがどっちから来るんだろうとか、いつ来るだろうとか考えながら。

にしてもすっかり7月だなぁー…
帽子被ってくればよかった。
頭のてっぺん熱い…
これパピーさんみたいに禿げる原因になるのかな?

・・・やだな、怖い。

と、熱くなった頭を撫でていると、目の前に自転車が止まった。
うん。ほんっと目の前。




『うわあっ!!!!』

「あ、早いですねィアヤ」

『いやいやいやちょ…あぶないって!!!』

「チッ」

『(舌打ち―――!!??)』




舌打ちした割には、あっさりと自転車をどける総悟くん。




「よォ」

『おはよう。てっきり十分くらい遅刻してくると思ってった。
二分だけだったね!』

「どういう意味でさァ」




そういう意味だよ、とはあえて言わなかった。
なんか、後が怖かったから。




「自転車で来なかったんですかィ?」

『え、遠いの?』

「別にそんな遠くねぇけど…めんどくさいじゃないですかィ。」




総悟くんはふむ、と考える素振りを見せた後、私の頭に自分の被っていたキャップをかぶせた。




『わ…』

「暑いだろィ、それ被っときな」

『あ……ありがとう。』




なんか照れる。
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