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□ペットは小さいうちが一番かわいい
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日にちが経つのは思ったより早いもので、私がこの学校に来て数週間が過ぎた。
ジリジリジリという機械音によって、私の目は覚まされた。





#5 ペットは小さいうちが一番かわいい






『あ……さっさと起きて、お弁当作んないと…』




ごそごそとベッドから出て、パジャマのまま部屋を出る。




『おはよーって…誰もいないんだった…』




やっぱり一人暮らしというものには、まだ慣れていない。
未だに誰かと生活している気は抜けない。
まぁそりゃあ、10年以上人と暮らしてきたからね。

無雑作に、ソファーに放り投げてあったエプロンを、パジャマの上から着る。



『よし。』



台所に入り込み、水道の水で軽く顔を洗う。
後でちゃんと洗うけどとりあえず今はこれだけ。
今はそんなことよりお弁当。
やっぱりパンがお昼って言うのには、抵抗がある。



『取り敢えずご飯と、梅干と…』



お弁当に、梅干は欠かせないよね。日の丸日の丸。
明日はカツオ味にしようかな。

そうしてお弁当を作り終え、朝ご飯。
まあ食パンにバターを塗って、トースターで焼いたものなんだけど。
このふんわりした、香ばしい香りが好きなんだよ!

食事を取った後は、ちゃんと顔を洗って支度。
カバンにお弁当と水筒をつめて。
少し、テレビを見て出発。

けれど、テレビをつけてみれば、いつものニュース番組はやっていない。
やっている番組がつまらなくて、今日は早い目に学校に出ようとした。
うん。静かな教室で朝を過ごすのも悪くない。




そうして、通学路に至る。
退の家とは少し距離があるので、会う確率はない。
そういえば同じ方向のクラスメイトっているのかな…。

そんな考えを巡らせながら歩いていると、ちょんちょんと肩をつつかれた。



「あれ、井堀さん。」

『え?』

「奇遇ですねぇ、一緒に行きませんか?」



聞いたことのあるようなすごく低い声かして、振り返る。
そこに立っていたのは、クラスにいた緑の巨人さん。
名前は確か、


ヘ ド ロ さ ん




『お、おおおおおおおはようございます、ヘドロ様!!!!!!!』

「おはようございます、屁怒絽でいいですよ。」




どうやら彼とは、同じ方向の様です。
うっそん大丈夫かな!!私生きて学校までたどり着けるかな…!


これはもう、つまらないとかじゃない。
半強制的に、(私が断れないだけ)屁怒絽様とご登校。

正直、怖い。
隣をニコニコと笑いながら歩いているはずの彼が、どうしてこんなにも恐ろしいんだろう…!!!!!



「あ、猫。」

『へ?』



唐突に、屁怒絽さんが指差したのは、前方の道の片隅。
小さなダンボールに、小さな白い子猫と黒い子猫が、それぞれ一匹ずつ顔を覗かせていた。




『あ、本当、だね。』

「可愛らしいですね。」

『え、あ、うん…捨て猫ですかね。』

「みたいですね。」



二人でダンボールの前にしゃがみ込む。
猫達は私達を見上げ、「ミィ〜」と子猫らしい鳴き声を上げた。

き、きゃわゆい………!!!




「どうしましょうか。
僕のうちのマンション、ペット禁止なんですよ。」

『わ、私…飼いたい…』




うちのマンション…確かペット大丈夫だったはず!
お金も、お父さんやお姉ちゃんに頼めば、何とかなる。




『でもどうしようか、今から家帰ったら流石に間に合わないし…かといって放課後までここに放置するのも…。
学校に連れて行くのは、だめ…ですよね?』



伺うと、屁怒絽さんはうーんとうなった後笑った。
しかし笑っても怖い…!




「だめ、ですが…それ以上に殺生は駄目です。
ここで子猫を見捨てるのは、殺生と同じ…
…今回は秘密にしておきましょう、僕達は友達ですしね。
良い隠し場所を知ってますよ。」

『!あ、ありがとう!!』




思わぬ屁怒絽さんの言葉に、私は頭を下げた。
どうやら彼は、良い人のようです。




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