物語
□incomplete Love:04
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「君は粒羅野楓さんに、無言電話や付け狙うなどの行為を行って精神的苦痛を与えた。これは立派なストーカー規正法違反だ。犯罪なんだよ。わかる?」
「犯罪?この気持ちを表すことが犯罪だって?ってかアンタには関係ないだろ。これは俺と楓さんの問題だ。さぁ、こっちにおいでよ楓さん…」
「い、嫌です」
「なんで?どうして?俺は君の事をずっと見てきた。その男なんかより君のことをずっと知ってるんだよ。君の事を一番理解しているのは俺なんだよ。さぁ、おいでよ?なんで怖がってるんだい?ははっ、怖がってる表情も可愛いけどねぇ…っ!!」
全身が凍りついたように動かない。
男の狂ったような笑みに捕らえられているような感覚さえする。
完璧に狂ってる。
恐怖で震えていると、奏出矢さんがいきなりこちらに振り返った。
自然と目が合うと、奏出矢さんは安心させるように微笑む。
そして私の頭を撫でると、また男の方に振り返った。
「ふざけてんじゃねぇ」
低く、今まで聞いたことのないような冷たい声で犯人に言葉を紡ぐ奏出矢さん。
その表情は、怒りに満ちていた。
「彼女のことを一番に理解してる?じゃあ答えてみろよ。なんで今彼女は怯えた表情で震えてんだ?」
「あ?」
「相手の気持ちも考えないで、自分の気持ちばっか押し付けるやつはなぁ、大っ嫌いなんだよ!!」
奏出矢さんの怒声が響く。
その奏出矢さんの声に、男は懐からナイフを取り出した。
街頭の明かりに反射して、ナイフが鈍く銀色に光る。
それでも奏出矢さんの表情は変わらなかった。
「うるさい、うるさい、うるさいっっ!!!お前に何がわかる!?消えろっ!!」
「自分の意見が通らないからって、暴れるのか?まるでガキだな」
「うるさいっ!!お前なんか消えろっ!消えろォォォツ!!!」
奏出矢さんの言葉に、ナイフを持って襲い掛かってくる男。
その時、奏出矢さんが小さく囁いた。
『下がってて』
私は言われたとおりに後ろにさがった。
奏出矢さんは男のナイフをよけると、その手を掴んで捻りあげ、後ろに回した。
急な激痛にナイフを落とす男。
男の足をはらって道路に押さえつけた奏出矢さんは、徐に手錠を取り出して男に手錠をかけた。
そして私の方を見て、笑顔で言う。
何もなかったかのように。
「楓ちゃん、警察に連絡してくれるかな?」
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