物語

□incomplete Love:04
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「こないだは焦ってたからよく見なかったけど、横須賀の駅ってこんなのなんだねぇ」





「別に他のところと変わらないじゃないですか」





「ねぇ、海って近いの?」





「……近いですよ」







せっかく質問に答えているというのに、聞いているんだろかこの人は。




まぁ、別にいいけど。







とりあえず改札を出て、アパートに向って歩き始める。




この道を奏出矢さんと一緒に歩くのは2回目だ。






まさかまたこうなるとは…。









「あっ、楓ちゃん!コンビニよってもいい?」




「別にかまいませんけど」




「お腹空いちゃってさ!!」








コンビニに笑顔で走っていく奏出矢さん。




あの人、本当に寝てないんだろうか。






そんなことを考えながら、奏出矢さんの後を追う。







そこまで考えて、私はふと歩みを止めた。





そういえば奏出矢さんがついてきてくれるって言ってから、家に帰るのがそんなに怖くなくなった。







やっぱり奏出矢さんが刑事だから安心しているんだろうか。





いつのまにかあの人を信用しきっている自分がいる。








信用できるほど一緒にいるわけじゃないのに。





そんな事を考えてコンビニの前で佇んでいると、奏出矢さんが出てきた。








「あれ、楓ちゃんは何も買わないの?」




「はい、特に買うものもないので」




「じゃあさ、おでん買ってきたから一緒に食べようよ!やっぱこの時期は中華まんかおでんだよね!!」







そう言って、私の目の前を歩き出す奏出矢さん。




私はその後を着いていく。






でも、途中で奏出矢さんが振り返った。




ちょっと困ったような笑顔で。






私が首をかしげると、肩をすくめる。




何…?







「楓ちゃんが前に行ってくれないとさ、俺楓ちゃんのアパートの場所覚えてないんだよ」




「あぁ、それもそうですね」




「今度来る時のためにも覚えなきゃね!」




「また来る気ですか?」




「うん」




「…来られても開けませんけどね」




「ひどっ!そこは快く迎えてよ!!」







私が前を歩くと、後ろで抗議の声が聞こえる。




何故か楽しいと思えるこの一時。







なんでだろう。





なんでなんだろうな。







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