物語

□incomplete Love:04
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「それは完璧にストーカーだね」





奏出矢さんが呟く。



結局全部話してしまった。






人も少なくなった車内で、席に座れたのはありがたかったが…。









なんだか背の高い奏出矢さんが隣に座ってると非常に威圧感が…。







「ってか、何で俺に会ったのにそういう大事なことを話さないかな!?」




「奏出矢さん、声を抑えてください。他の人に迷惑です」







私が言った言葉を気にしたのか、周りの人に曖昧な笑みで会釈する奏出矢さん。




まぁ、一応話してはみたけど…。





今更思う。




本当にこの人で大丈夫だったんだろうか。







ストーカーとやらが現れて、簡単にやられてしまいそうな奏出矢さんが容易に想像できる。






そんなことを考えていると、自然にため息が出た。








「楓ちゃん、ものすごく失礼なこと考えてない?」




「考えてますよ」




「否定しないんですか…!って、結局何で俺に話してくれなかったわけ?」








詰め寄ってくる奏出矢さん。




しつこい。



そもそもこんなことを話すほど私は奏出矢さんと親しくなった覚えはないんだけど。









「別に、奏出矢さんじゃ頼りにならないかと思いまして」




「じゃあ、俺が電車から降りたときの悲しそうな目はなんだったのかな?」




「そんな目してません。断固してません。それより、疲れてるんじゃななかったんですか?」




「そこまで疲…っ、あ、俺が早く家に帰りたいって言ったから遠慮して話さなかったの!?」




「違いますっ!」




「楓ちゃったら、俺に気を使ってくれたんだ?優しい子だねぇ」




「だから、違いますって!!」




「ほらほら、声を抑えないと他の人に迷惑だよ?」




「〜〜っ!!」







すっごく憤りを感じる。




奏出矢さんにからかわれているって言うこの状況がすごく腹立つ。





私は奏出矢さんとは逆方向を向いた。




なんかその余裕そうな笑顔を見ているとさらに腹立つ。






そんな私の言動に、奏出矢さんは若干焦ったのか私の顔を覗き込んでくる。








「あれ、楓ちゃん怒っちゃった?」




「別に、怒ってませんよ」





「嘘だ、その声のトーンは怒ってるでしょ!?」




「何で2回しか会ったことのない奏出矢さんが、私の声のトーンで感情を読み取れるんですか」




「いや、なんとなく…」




「……」







だめだ。



やっぱりこの人ではダメだったかもしれない。





でも、まがりなりにも警視庁の刑事なわけだし…。







あれ、警視庁…?









「奏出矢さんは、警視庁の刑事ですよね?」




「そうだよ?」




「管轄が違うからダメなんじゃないんですか?」




「いやいや、困っている市民を助けるのは俺達の仕事なんだよ?それに、管轄も何もないでしょ?」




「……酔ってます?」




「失礼だよ、楓ちゃん。めちゃくちゃシラフだから」








奏出矢さんが不満そうにそう言う。




そんな話をしている間に、どうやら横須賀に着いた様子。





私と奏出矢さんが降りると、すぐに冷たい風が吹き付けた。





寒さで思わずマフラーの中に首を埋める。






本当に寒い。



夏は嫌いだけど、冬もあんまり好きじゃない。







早く暖かい場所に行きたくて、私はすぐに歩きはじめた。




後ろについてくる奏出矢さん。






どうでもいいけど、キョロキョロ周りを見るのをやめてほしい。








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