2nd.
□第1章
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声
その侵入者が部屋に入ってきたのは、眠気に負けそうになっていたときだ。扉を叩く音に少し体が震えたがそのうちすぐに諦めるだろうと思った。案の定、ノック音はすぐに止む。ほっと安心したのもつかの間、そいつは部屋に入ってきてしまった。一瞬の間に眠気が吹っ飛ぶ。どうして部屋の鍵を掛けなかったのかと、少し前に出て行った緑色の人間を呪う。
物陰に隠れて様子を見ることにした。ベッドと棚の間に体を滑り込ませる。侵入者の影しか見えないが、これで自分は向こうから見えなくなったはずだ。
侵入者の影はなぜか驚いたように部屋の真ん中で身を竦ませる。何故だろう、と考えを巡らしすぐに思い当たる。
しまった!相棒がベッドで寝ているのだった!
物音を立てないように相棒の顔が見える位置に移動する。正体なく寝こけている相棒を確認。規則正しく上下している胸をみて安心する。最近慣れないことばかりで疲れているのだろう、そばに近寄ってきた侵入者に気付くことなくぐっすりと寝入っている。
相棒の顔に侵入者の手が伸びる。
白い手が相棒の額の銀色の髪を払いのけた。さらさらと部屋の中の薄暗い光を反射してうっすらと光る。
相棒に危害が加えられる前に何とかしなくては、と気付かれないよう体内の熱を高め、ぷくっと体をふくらまし火を噴く準備をする。
「…変なの」
突然侵入者が喋った。ポツリと漏らされたそれは誰かに喋りかけるというより本人が意識なく漏らした言葉にちがいない。そして声には戸惑いのようなものが感じられ、侵入者自身もなにかそわそわと妙に落ち着きがない。
そしてハタっと気が付く。その声には聞き覚えがある。いつも鞄を通して聞く、それに一度だけ顔を合わせ話したたことがあった。一気に緊張が解ける。確か名前は…
「…アリス?」
声を掛けると途端にアリスはビクリと身を竦ませた状態で硬直。そしてぎこちなく首と視線を巡らし声の主を探していた。この場所はアリスから影になっているから分かりづらい。
「ここだよ」
ベッドの上へと飛び乗る。ゼリー状の体が衝撃を吸収しプルプルと震える。少し上には驚き目をまんまるさせ、じっとこちらを見ているアリスの顔。
「…す、スラりん?」
口をぱくぱくさせながらこちらを指差し名前を呼ぶ。名前を覚えてくれていたことが少し嬉しい。巷では締りのない顔だと評判の顔がさらに緩む。
「どうしたの?」
「あ、うん、ちょっと、ヒマだったから」
妙に歯切れが悪い返事だが、あまり深くは考えない。ちょうどよかった。こっちは先に相棒に寝られ退屈していたのだ。
「でも緑色の人間どっかいったよ」
「ほ、ほんとだわ」
「シルヴィスも寝てるし」
「そ、そうね」
「だからボクの話し相手になってよ」
「…は?」
にんまり笑顔でこういうとあっけにとられた後少し悩む素振りを見せ、快く了解してくれた。
〜気ままにあとがき〜
スライムだって頑張ればきっと火ぐらい吐けます。
モンスターズではたしか火の息をおぼえるし、ジョーカーではスラフォース(スライム系お似合いの特技!)でメラを覚えたはず!
恋愛要素、まったくなし!!どうしよう、私!!
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