2nd.
□第1章
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運命
その日の町はいつにもまして活気に満ちていた。
それもそのはず、今日は16歳、つまりこの国で成人と認められる年齢に成長した、勇者オルテガの子が魔王討伐の旅に出る。
オルテガを知るものは口々にこう語る、あの男は偉大な勇者だった、全ての国に認められた勇者だ。老若男女問わず、全ての者がオルテガに期待していていた。きっと魔王を倒しこの世に平和をもたらしてくれるだろう、と。
それがこの世に姿を現したのは今から約数十年前ほど。正確な年号は誰にもわからない。突然生まれた異形なのか、それとも前からこの世に生をなし、ずっと機会を窺っていたのか。
魔王バラモスと名乗るそれは、突如として現れ国々へと宣戦布告をし、瞬く間に逆らう国の近隣の町や村を滅ぼし、そして魔の山と誉れ高いネクロゴンドへと居を構えた。もちろん国々は勇者と呼ばれる勇敢な戦士の多くは魔王討伐のため旅立ったが、みな魔王のもとへ辿り着くこと無く、志し半ばで散っていった。
オルテガが旅立ったのは多くの戦士たちが挑み帰らぬ人となり、世界中が嘆きに包まれていた頃だ。
はじめは相手にもされなかった。だが数々の難所を越え、村々を救うオルテガに、人々はこの男ならば、と期待を持ち始め、その小さな希望の火は瞬く間へ大陸全土へと広まり、大きな炎となった。
その矢先、オルテガの訃報が知らされた。ネクロゴンドへと続く山の火口にて魔物の襲撃に遭い、戦闘の最中に火口へ落ちたという。
魔物との戦闘は熾烈を極めたと、今でも吟遊詩人たちはオルテガへの慰めと人々の嘆きを歌う。偉大なる勇者オルテガ、せめて今は安らかに眠らんことを。
世界は再び嘆きに包まれた。
オルテガには子が一人いた。オルテガの訃報が知らされたとき、わずか9歳。
だがオルテガの子は女の子だった。人々は幼くして偉大な父親をなくした少女に同情こそしたが、誰もオルテガの意思を継いで、などとは期待しなかった。なぜなら女だったから。
だが少女は違った。幼いながらも父の志を受け継ぎ、きっと魔王を倒して見せると自らに誓いを立てた。偉大な父、大好きだった父。きっと無念を晴らしてみせる。
そして時は満ち、少女は世界を救わんと旅立つ。かつてオルテガがそうしたように。
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