1st外.
□01はじめて声を殺して泣いた日
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ゼフィルは幼少時の頃より賢い子供だった。
自分に圧し掛かっている期待も母や祖父の立場もよく理解していた。そして自分には拒否権がないことも知っていた。
父オルテガの訃報が知らされた時から、ゼフィルの今後が決定された。その全てが自分の手の届かぬ所でだ。
アリアハンの王は絶望する民衆に自分という生贄をさし出したのだ。どうするんだ、と民衆が国に軍事力をもって魔王を倒せという前に、国が痛手を被る前に早急に手を打ったのだった。
目論見通り人々の意識と期待はゼフィルへと集中した。そして幸か不幸かオルテガを凌ぐのではないか、と噂されるほどの才覚を見出されてしまった。
そこからゼフィルの生き地獄は始まったのである。
そんな奴らのいいなりになって生きている自分は、まるで操り人形のようだと常に思っていた。
やりきれなくなり、手当たり次第に女と遊んだ事もあったが全て黙認されてしまった。
だが、母と祖父からは人並みに愛されていた。
嫌ならやらなくていい、期待に応えなくともいい、ゼフィルはゼフィルだからと勇者以外の道へと歩むことを許してくれた。当時自分にそう言う事がどんなに大変だったかと言う事もゼフィルには理解できた。
本当の意味で自分がスれなかったのは家族のおかげだ。
だが、そのせいで逃げ道が無くなったことも確かだ。
母と祖父には何不自由なく生活してほしい。か弱い母と年老いた祖父。自分が勇者として旅立つ以上国から報奨金が出る。
こうして、生きては帰ることの出来ないのであろう過酷な旅に出ることを決意したのである。
めでたく成人を迎えたゼフィルは旅立つことになった。
〜気ままにあとがき〜
以前拍手にあったのを移動してきました。
勇者ゼフィルくん視点の1stのお話です。
お子様のリゴットとはまた別の視点で世界を見ているので、書いていてちょっと楽しい。
が、果てしなく内容が暗い!!
これからもダークな感じですが、どうぞよろしければ見てやって下さい。
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