小話

□中学生×家庭教師
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「ぎゃはは、ばっかじゃねーの」
「……ああ、傑作だろ」


匂宮出夢は俺の話を聞くなり、開口一番そう言った。
身体は女、中身は男というややこしい事情の持ち主だが、
俺はこいつを女だと思ったことはない。
うり二つの双子の妹がいるが、こっちの中身は女の子だ。
たまに入れ代わってクラスを混乱させる。まぁ、妹の演技が下手すぎてすぐにばれるのだけれど。


「つーかお前、そういう奴なの?男が好きなの?」
「いや、そういう訳ではないと思う。そいつだけだ」
「にしては男を好きって受け入れるまでの葛藤が少ないだろ…僕がどれだけその事について苦しんだと思ってんだ」
「多分それはお前の事情を知ってるからだと思う」
「あっそ……ふーん…で、零っちはこれからどうしたいんだ?」


…どうしたいんだろう。

「……まぁ…今まで通り、か?」
「ぎゃはははは。それで健全な若者が我慢出来るとも思えねーけどな。この出夢お姉様が慰めてやろうか?」
「ふざけんな。お前は男だろ」
「ぎゃはは。男も守備範囲なんだろ?」
「違う!好きなのはそいつだけだ!」
「…ふーん、零っちをそこまで惚れさせる男ねぇ…気にならないと言えば嘘になるな」
「お前だけには絶対紹介しねぇよ」
「ぎゃはは、冷たいなー。舞織は知ってるかな」
「さぁな」


因みに出夢は俺の妹の舞織ちゃんと付き合っている。よく考えたら嫌なカップルだった。

中三と中一の百合カップルというのは、今の時代ならそこまで珍しくないのかもしれないが、
それが妹と友人となるとまた感想は違ってくる。
まぁあくまで見た目の話で、本質的に出夢は男だけれど。


「で、話戻すけど今まで通りって?」
「…勉強教えてもらったり、くだらない雑談したり、時々抱きしめたり…は無理か…」
「ぎゃはは。抱きしめたりってお前」
「もう習慣になってたからな…」
「よく暴走しなかったな」
「お前と一緒にするな」
「ぎゃは、結局暴走してんだから人の事言えないだろ」
「…ぐ」

その後は、出夢と舞織ちゃんののろけを聞いたり、ぐだぐだと雑談したりプロレスごっこをしたりして夕食までの時間を潰した。
帰り道の月は、やけに明るく見えた。
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