小話

□中学生×家庭教師
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この俺、零崎人識はどうかしてしまったのかもしれない。

「ちょっとだけ気になる」だけの家庭教師。
そいつは全然家庭教師らしくないうえに、初対面の俺の脅しにも全く動じなかったどころか、反撃までされかけた。
だから、気に入った。
最初はただの興味だった
「いーたん」なんて恥ずかしいあだ名を付けたり
思い付きで抱き着いてみたり
果てにはそれを習慣化させてみたりと
普通の男なら嫌がるはずの事もそいつはあっさり受け入れた。

あまりの抵抗のなさに、童貞だからかそうなのか、と俺は適当に理由を付けてみたりしたのだけれど

だけど

ふと見せる孤独な表情や
抱きしめると意外と頼りない身体とか
今にも壊れそうな脆さに惹かれた。

気がつけば恋をしていた。


……だから、期待していたんだ。
受け入れるのは少なからずあいつも俺が好きだからだと。



+++
その日は特別だった。
初めてのいーたんの家は、予想通りと言えば予想通りの小さなアパートだった。
大学生によくあるタイプの下宿先だ。
…まぁ、大学生すらもわざわざ選ぶかどうか怪しい建物だったが。
俺はいつものように受験勉強、いーたんは隣でレポートを書いていた。
いーたんは文学部らしい。
国語系が苦手な俺には理解出来ないが。


しばらくすると疲れてきたので、いつものようにいーたんを抱きしめる。
ああ、至福。

ちょっと悪戯したら大袈裟なくらいに反応した。
何この可愛い年上男。

調子に乗った俺がしばらく悪戯を続けていると、不意にいーたんが言った

「…こういう事は、可愛い女の子とするもんだろ」

……思考が、止まる。

「いーたんって、そういうのなさそうだよな」

まて、いやだ、聞きたくない

「僕だって可愛い女の子に抱き着かれた事くらいあるさ」


頭を鈍器で殴られたような気がした。
俺は何を誤解していたんだ
いーたんは俺なんかより4歳も年上で
いくら恋愛経験が乏しく見えたって普通の男で。


ぐるぐるぐるぐると思考が回る。

衝動的にキスをしていた。


いつもは無表情ないーたんが、柄にもなく顔を赤らめて動揺していた

思いをぶつけた行為は無惨にも拒否され、俺は直前の自分の行為を思い出し激しく後悔した。

「どうして?」


ああ、困ってるな。と思った。
そりゃそうか。通常恋愛対象にならない男同士だからあっさり受け入れたのに
その男からキスされたらビビって当然だよな。

…だけど
これだけは言わせてくれ。

「俺、いーたんが好きだ」


いーたんは全く予想外だ、と言わんばかりに目を見開いて驚いていた。
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