小話

□零僕
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※事後です


ぐるぐるぐるぐるぐるぐる
回って廻って一回転

きみはぼく?


「いーたんいーたんいーたん」

不意に名を呼ばれる
あれ、確かぼくは昨日零崎に抱かれてその後どうしたっけ?

「ぼくの名を害悪細菌みたいな名前で呼ぶな」
「起きた?」
「寝てた事にも気づいてなかった…」
「かはは、やっぱり?気持ちよかったろ」
「黙れ変態」
「俺を兄貴みたいな名称で呼ぶな」
「あー、なんか頭がぐるぐるする」
「ん、じゃあもっかい寝る?」
「変な事しないでよ?」
「しませんって」

昨日はあんなにも意地悪したくせに、かははと爽やかに笑う

「久々だったから、あんまり手加減できなかった。ごめん」
「…いや、怒ってないけど…驚いた、かな」

もう会えないし会わないって思ってたから。
こいつに会うのも、こういう行為をするのももう8年ぶりだ

昨日、よういーたん久しぶり、なんて軽く挨拶された時には夢だと思った。夢じゃなかったのでとりあえず殴った

「いってぇ…何すんだいーたん」
「今まで連絡繋がらなくて顔も見れない声も聞けない手も繋げない抱きしめてももらえないキスもできない状況で八年も放置しておいて何を言うか」
「ごめんなさい」
「ごめんで済むなら警察はいらないんだよ?」
「ちょ、警察だけは駄目だ!」

と、まぁこんな感じで。
八年もたつのに、お互い相変わらずだった。僕も零崎も、やってる事は昔と違っていたけれど。

「でもなんか安心した。いーたん、イイ所変わってねぇもん」
「…君の変態ぶりも変わってないね」
「そういう事を言うか。まぁいーたんのツンデレ具合も変わってないな」
「知らなかったのか?僕はピーター・パン症候群だ」
「全然格好よくねぇな、それ」

零崎は苦笑を浮かべて、僕の背中に手を回す。僕も零崎にがっちり掴まる

「零崎……」
「何?」
「僕ってさ、まだ欠陥製品?」
「…いーたん自身はどう思ってる?」
「昔よりは色んな事がわかってきたと思う。他人の痛みとか、自分の痛みとか、死への畏れ…とか。でも、まだ足りない気もするんだ。そう勘違いしてるだけのような気がして」
「そうか?誰だって他人も自分も完全に理解出来ねぇんだから、少しでもわかった時点で、欠陥製品は卒業だろ。かはは、おめでとう」
「そう…なのかな。零崎は?」
「俺?そうだな…ま、妹のおかげでカゾクアイ?みたいなもんはちょっとずつわかってきたかもしんねーな」
「じゃあ君も人間失格は卒業だね。おめでとう」
「サンキュ。こんなのも悪くない…いかんいかん、うっかり曲識兄ちゃんの口癖が」
「カゾクアイ、か。ふぅん」
「…笑ったいーたん初めて見たかも。ちゅーしていい?」
「意味わかんないよ。でも…いいよ、して?」
「頂きます」

成長しても
変化しても
卒業しても

ぐるぐるぐるぐるぐるぐる
回って廻って鏡のように
きみはぼく。



+++
事後設定はまぁそうでもなきゃしない会話かなーと思ったので。
と言いつつ冒頭は何も考えずに書いた挙げ句かなり長期間放置してたという…←
前半と後半でノリが違うのはそのせいです。いつも出任せな癖をどうにかしたまえ私。
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