小話
□零僕
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5/13の話のはず。
俺には好きな人間のタイプが二種類ある
ひとつは背の高い女
もうひとつは無表情な人間だ
但し無表情な人間が『好き』というよりは、
『興味がある』という方が正確かもしれない
無表情だからこそ、どんな表情をするのか知りたくなるし、何を考えているのか知りたくなる
かといって、ただの無表情には興味ない
明確な基準がある訳ではないが。
とにかく、俺は出会ってしまった。
興味の尽きない人間に。
鴨川の橋の下で、初めてそいつの顔を正面から見た
その瞬間、俺は動けなかった
何故か。
惚れてしまった。
不覚にも
深く。
やべぇ好きだ、と聞こえないように呟いてみた
対峙し、そしてナイフを構える。
好きなタイプの人間を殺すのは少し躊躇したが、顔を見られてしまったので後々面倒だ
というもっともらしい理由もあったのだが、本当はそんな理由ではない。
そいつが俺のナイフを避けた隙を狙い、一気に畳み掛けた
俺が相手に馬乗りになり、心臓にナイフを突き付ける
同時にそいつは俺の両目に指を突き付けた
硬直する俺。
紅潮する俺。
眼球の数センチ先にそいつの指があるせいで、じっくりと顔を見る事は出来なかったが、それでも表情を読み取る事は出来た。
そいつは目を閉じなかった。
その時に予感は確信になった。
俺はこいつを殺すことは、不可能だと。
ナイフを捨てた
「傑作だぁな」
俺は言った。
「戯言だろ」
そいつは言った。
そうだな。
笑ってしまいたい。
笑ってしまおう。
始まらないレンアイを始めよう。
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センスのある駄洒落を書きたい
あと長さの割に謎ですね。痛。