小話

□中学生×家庭教師
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最後の家庭教師は人識君の家で行われた。

そういえば家庭教師と言いつつ「家庭」という表現はこの場合あまりそぐわない、みたいな事を彼は言っていたんだったか、と軽く回想。

では人識君と、その妹であるところの舞織ちゃん、その兄であるところの零崎先生とは、厳密にはどんな関係に該当するのだろう…と考えたところで、
部外者である僕にとっては家族と表現するしかないのだけど、本人達の間ではそう簡単に処理できない感情があるのかもしれない。

なんて、戯言なんだけど。

零崎家では、舞織ちゃんが出迎えてくれた。
いつもの人識君の部屋へ行こうとすると、彼女は「今日はこっちですよぅ」と僕を別の部屋へ連れて行った。
微かな違和感に、僕は少し面食らう。

「あれ?人識君は?」
「……いーさん、お兄ちゃんが話があるんだそうです」
「お兄ちゃんって…零崎先生のこと?」
「はい」

……まさか解雇だろうか。僕からではないとはいえ、いろいろとまずかったのかなぁとぼんやり考える。

舞織ちゃんは暗い表情で僕を客間の方へと通す。
そこは、僕が人識君にデコピンを仕掛け、人識君が僕に定規を突き付けたあの部屋だった。
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