-短編-

□笑顔
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沖田さん…沖田さん…。
もう、名前を呼んでも、返事が返ってくる事は無い。近所の子ども達と遊ぶ姿も、はにかむ様な笑顔も、私の事も、彼の澄んだ瞳に映る事は無い。
そっと瞳を閉じると、頬を伝う一筋の涙。
この涙も、優しく拭ってくれる事も無い。でもね、瞼の裏に映るのは、彼の笑顔。私の大好きな―…。
辛い時も、苦しい時も、いつも笑顔でいた。そんな彼の笑顔に、何度助けられただろう。
死ぬ間際に、彼は、「私は、貴女の事を、ずっと、見守っていますよ…」なんて、親みたいな事言っちゃって…。
そう言った後に、優しく、いつもの様に、抱き締めてくれた。優しい、笑顔で。
あの時の温かい、ぬくもりと、凄く優しい笑顔は、忘れないよ。
私は、彼の墓に手を合わせ、軽く墓石に、接吻をする。そして、にこりと微笑むと、ゆっくりと立ち去る。
その瞳には、何やら、強い意志が込められている様であった―。

→後書き

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