-短編-
□君と再び
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「…………」
黙ったまま、手を合わせ、瞳を閉じる。
今日はあなたの命日。
「平助…」
名前を呼べば、またあなたに会える気がして、名前を呼ぶけど、あなたの笑顔に出会えることはない。
「あら、永倉さん」
腰に大小を差す者がいなくなった時代の中で、永倉さんに再び出会った。
その隣には、『三馬鹿』と言われた内、二人の姿は何処にもない。
先にも申し上げた通り、今日は『平助の命日』。
油小路で刺され、三馬鹿と笑い合いながら息を引き取った(と聞かされた)平助の命日。
「あ、あはは…。みんな、死に急ぎすぎだよネ」
笑うあなたの顔も何処か寂しそうで私は、瞳を伏せた。
「土方さんも函館で死んだって聞いたし、三馬鹿も俺だけになったし……」
瞳を伏せていても分かる。
永倉さんの声が震えていたから。
その震えは増していき、
「ほんっと…死に……急ぎすぎ………」
あなたは、後何回、彼らの墓参りをするのだろうか。
何回、あの血生臭い時代を思い出し、涙を流すのだろうか。
「泣かないで、とは言いません。ただ、平助の前では…笑顔でいてあげてください」
「泣かないでって言ってるようなモンだヨ」
私と永倉さんは、互いに眉を下げて笑う。
「昔話でもしない?ウチにおいで」
さっきまで泣いてたくせに、と言いたい言葉は呑み込んで頷いた。
永倉さんくらいしかいないから。
新撰組の話が出来るのは。
あの血生臭い時代の話が出来るのは。
恋人だった、彼の話が出来るのは。
目の前にいる彼だけ。