「そう簡単に死ぬとか言ってんじゃねぇ!!」
「…貴方は、」
「てめぇに死なれる訳にゃいかねぇんだよ!そんなに死にたきゃ全部終わったら俺がお前を殺してやるから、それまで待ってろ」
「……物騒な人だな」
「そういうお前はどうなんだよ?」
「…僕は医術師です」
「死にたがりの医者か」
「違いますよ。貴方と居ても役に立てないから置いて行けと言っただけです」
「は?」
「やれやれ。一人の方が都合が良かったんですが、仕方ありませんね」
「お前…」
「行きますよ、玄武!!」
「おぉっ!!」

「…玄武を見ても驚かれないんですね」
「まぁ、俺の青龍も似たようなもんだからな」
「青龍…?まさか、貴方が葵壮弥さんですか?」
「今更?そっちはクリス・シュタットだろ?――ヨロシクな」
「……」
「俺は死ねないんだ。弟や妹達が待ってる。だから、俺が少しばかり無茶しても、お前は絶対先に死んだりするな。俺はお前を見捨てない。だからお前も俺を最期まで諦めるなよ?」
「…全く。我儘な人だ」
いいですよ。その代わり、死にたくなるような麻酔なしの手術になっても泣き言いいっこなしですからね?



「お前に生きる意味をやろう」
「…何だよ、それ」
「俺を死なせない為に生きろ、伊織」

「…何て莫迦な事…!!僕を庇ってどうするんだよ!!?」
「悪ィ…死ぬかも…」
「ざけんな!!お前は僕が生きる意味なんだろ!!?お前が死ぬなら僕も死ぬ!!」
「……最期、の頼み…聞いてくれ」
「おい!」
「妹を頼む…」
「――おい!!」

「今日付けで姫様に就きます」
「お兄様を最期にみとって下さったのが貴方で良かった」
「過ぎるお言葉です…守れなかった」
「………」

「お前の弟、随分と里人様に執心だったようだな」
「里人様は伊織の王であり、神様でしたからね」
「お前にとっての里緒様と同じか」
「…私は里緒様が死ぬようなことがあれば迷わず後を追います。例え、里緒様がそれを望まれないにしても、私は伊織のようにはなれません」
「それでいい。斗織…お前はお前だ」
「律…」
「だが、死ぬ事は赦さん。万一、主君を守れぬ時は生きて購うんだ」
「――はい」



「私には何もないよ。今までもこれからも…食べてさえ行ければどうだっていいんだ」
「食べたいと言う割に死にたがりなんだな。食べる事は生きる事だと思っていたんだが」
「……誰もがお前のようにはなれないさ、槙」
「俺もお前のようになれるとは思えんが、」
意味ある死を求めるのなら、此処はうってつけだと思わないか?

「死ぬなよ、久慈」
「誰に言ってるんだ?此処は私の望む死に場所じゃない」
「そうだな」

「妙な気分だ…望む死を手に入れたのに、もう少しだけ、お前達を見ていたいと思うんだ…もう一度、あいつらと、宴…酒、一緒、に…」
「死ぬつもりなぞ、毛頭、なかったんだが…これは流石に、死ぬか…生きて国を…民、を…見守り、たかった…仕方、ないな…後は、任せ…る…」



「消えるな、黄麟…!!お前がいれば、再び御子は現れるんだ」
「行くぞ、黄龍!!御子たる僕に従え!この亡国を離れる」

「妾の本当の名は郷無…故郷を持たぬ者…。そんな妾に国を救えるの?」
「やるしかないだろ。今のお前は、里を一つにする者だ…里緒」

「僕の愛する人はもういない…だからせめて、これから好きになる人たちを守りたいと思うんです」
「お前…死ぬ気か?」
「まさか。僕は置いて行かれる悲しみを知っています。だから、少なくとも貴方が死ぬまでは死んだりしませんよ」
「――は。良い根性してやがる」
「やった。褒められた♪」
「…そうだな。最高の褒め言葉だ」
「すみません、壮弥。約束、守れないかもしれません」
「何の事だよ。お前は俺を見捨てない。それで充分だろ」
「…勿論です」


「行け、律…!お前は生きて、鍵を守れ」
「妾は国を守れなかった…せめて民は、生きて…」
「里緒様―!!」


――戦いは、彼女の死を持って終わりを告げた。



亡国の姫の願い事 good bye forever…

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