ベイブレード2009本編
□1-7. 過去
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「おいカイ、何とか言えよ。お前、朱雀を奪われたんだぞ!」
タカオがお門違いと分かりつつもカイに詰め寄った。当のカイは何も答えない。
「なぁ、カイ…お前の知って居るエリスについて、教えてくれないか」
「レイ…?」
「だって俺たちは、エリスを全く知らなかった。一度手合わせした俺でさえ、あの強さに聖獣を持ったブレイダーという考えには至らなかった…カイの幼馴染だって聞いた時もそうだ。勝手に、カイがボーグに入る前に会ったのだと思い込んでいた」
「……確かに。二人とも、何も言いませんでしたからね」
「どうしてよ?カイだって、エリスがあんなに強いって知ってたんだったら言ってくれたってよかったじゃない」
ヒロミの言葉に、ついにカイが口を開いた。
「…ひどい処だった」
「え…?」
「強さがすべて。敗者には鉄槌を。弱者はゴミと扱われる場所だ」
ボーグと言うものをじかに感じた事のなかったヒロミには想像容易くなかったようだが、一度、ロシアの地で全盛期ボーグを見ているタカオ達は押し黙った。
「お互い、思い出したくもなかった、ってことか」
「…恐らくはリンもエリスに従っているんだろう。ユーリ達はどうだか知らんがな」
「リンもボーグの…?」
カイは頷いた。
「でも如何してエリスちゃんとリンちゃんが聖獣を狙ってるネ?ボーグはもうなくなったのに?」
「聖獣の力を欲するのは何もボーグだけではありませんよ」
キョウジュが答えた。
「新しい何かが動いているのかも知れません」
「で、エリスはその一員、ってか」
タカオが苦々しげにそう言った。
「でも、エリスはそのボーグって処で辛い目に遭ってきたんでしょう?なんだってまた同じような処にいるのよ」
ヒロミのそれには、誰も答えられなかった。答えるには、タカオ達はエリスを知らなすぎたのだ。