ベイブレード2009外伝@

□仔犬
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ある日、木宮家に飛び込んできたのは一匹の仔犬。

元はクリーム色の雑種と思われるその犬は、先ほどまで降っていた夕立のせいか、泥水でずぶ濡れになって木宮家の門の前で丸まっていたのだ。

哀れに思ったじっちゃんが連れて入ってきたのは良いのだが…

「おい!!」

「わ!」

「ほえ?」

「あ!」

「きゃあ!!」

「あああ!!!」

ガッシャーン…!


泥水を落としてやろうとすれば体を震わせて辺りを汚し、抱えようとすれば逃げ出し、ミルクを出せばひっくり返してしまう。

「元気そうで何よりじゃが…」

「この馬鹿犬、いい加減に…」

「往生するネ!!」

じっちゃんは壊された壺を前に意気消沈。タカオとマックスもその犬の捕獲に手を焼いている。

「取り敢えず、布巾だな」

「新聞紙もお願いできますか」

「ちょっと待っててね」

レイはひっくり返されたミルク、キョウジュとヒロミは壺の片付けに当たった。

「こんなもんだな」

片付けの済んだレイたちは一息つくと、未だに追いかけっこをしているタカオとマックスと犬を見やった。

「二人があの犬を捕まえたらあの辺りも拭き掃除だな」

「ですね…」

「もうー、何やってんのよ!?サッサとその犬、捕まえなさいよ」

ヒロミの声援も虚しく、二人の腕をかいくぐって、その犬はふすまに向かってダイブした。

「ああー!!」

襖に開くであろう大穴と咄嗟の「衝突」にタカオが目を覆ったその時、

「アン!!」

予想していた音は一切せず、やけにご機嫌な犬の声が聞こえた。

「…何の騒ぎだ?」

カイだった。

タカオ曰く、馬鹿犬は、カイの腕の中で上機嫌に啼いている。

「お帰り、カイ」

「ああ。…この犬は?」

カイは慣れた手つきで腕の中にいる薄汚れた犬を抱き直しながらレイに言った。

「雨にぬれてて可哀想だからとタカオのお祖父さんが家へ上げたんですが…」

「とんでもないいたずらっ子なのよ」

その説明で、その部屋の惨状を理解したカイは、腕の中の汚れた生き物を見下ろした。

「その馬鹿犬のせいで、服が泥だらけだぜ、全く」

見下ろされた犬はタカオの罵声などどこ吹く風でカイの腕を舐めたり頬ずりしたりしている。

「……。」

「…何処行くネ、カイ?」

「風呂。洗ってくる」

「タオル用意しておくよ」

レイの言葉にうなずいて、カイは部屋を出て行った。

残されたタカオ達は泥水が渇く前に急いで部屋中の掃除を開始した。
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