ベイブレード2009外伝@
□心太
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「ところてん、ですか?」
「ああ。心が太いと書いてところてん。天の川みたいじゃから七夕の夜に持って来いじゃ」
「……はぁ」
「もしやエリスちゃん、ところてんを知らんのか?」
「すみません」
じっちゃんはにっこりと笑うとエリスの頭を撫でまわした。
「謝る事じゃありゃせんよ。しかしそうか、聞いた事も見た事もないかの?」
「ないです」
ふむ、と腕を組み直してじっちゃんは言った。
「なら、今夜わしがふるまってやろう。楽しみに待っていなさい」
「はい」
エリスは嬉しそうにそう答えた。
***
「…何だこれは」
カイの前に、清涼感たっぷりのところてんが置かれた。話には聞いていたエリスも初めて見るその透明なそばのようなものに興味津々だ。
「トコロテンて言うんだって」
タカオとヒロミ、キョウジュは勿論ところてんを知っている。父親が日本人で日本での生活にもなれているマックスも食べる事が大好きで七夕の伝説も知っているレイも食べた事があった。5人はまるで未知との遭遇でも果たしたかのようなカイとエリスの反応を見守っている。
「綺麗…」
「………。」
「…ところてんを知らないなんて、二人とも本当に日本人なのネ?」
「確かに二人とも髪色が青みがかってて生粋の日本人て感じではないが…」
「いやでも見た事も聞いた事もないとかないだろ」
「ところてんと出会う機会がなかったんですね」
「ホントに良家の子女子息なのね…」
思わぬ処で発覚した二人の世間知らずぶりを批評する。
まるでそれを本当に食べ物かと疑う目つきのカイと、透き通るそれに目をキラキラ輝かせるエリスを楽しそうに見守るじっちゃんは、二人に早く食べるように勧めた。
「………。あ」
「……な…」
つるつる滑るそれはなかなか掴みにくい。何でもそつなくこなすカイと、手先の器用なエリスの下手な箸さばきがタカオ達を笑わせた。
「おいしい…です」
「………。」
びっくりしたようにいうエリスと箸使いの要領を得て黙々と食べるカイの様子にじっちゃんは満足げだった。
「二人が気に入ったのなら、いつでも作ってやるぞ!まだまだあるからタンと食べなさい」
それから約1週間、毎日毎日ところてんが出された。タカオ達は3日であきてしまったのに、それらを毎回美味しそうに食べるのはカイとエリスの二人だった。
甘くないし、きっとカイも好きだと思う。ところてん。
強化合宿のちょっと前。