ベイブレード2009外伝@
□泣声
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「ヴェルの馬鹿!ヴェルなんて知らない!!」
「……申し訳ありません、お嬢様」
謝る俺を見るその灰色の瞳が涙を湛えていた。その小さな肩が震えていた。俺の前で綺麗にターンして、あの方の元へと駆けて行った。
「ひっく…ひっ…ぅぁー…あぅ…」
奥様の部屋から聞こえる鳴き声が、俺を責める。貴女を庇ってぱっくり切れた腕よりも、胸が痛い。けれど明日には、貴女はきっと笑って俺を呼ぶ。
「ヴェル、昨日はごめんなさい」
そう言って上目遣いに許しを乞う俺の姫君。
「私がお嬢様を守りますから、お嬢様はそこで笑っていて下さい」
そう言った俺を、貴女は叱る。
俺だけに何かをさせて笑って見ているだけだなんて、絶対に嫌だと。
ああ、ならばせめて…
「信じて待っていて下さい。そして私を笑顔で迎えて下さい」
信じるのも、待つのも、本当に強い人にしか出来ない事だから。
「私も一緒に戦う」
貴女がそう言うのは、貴女と俺とで守りたいものが違うから。
ヴェルとその姫君は多分、ずっとどこかですれ違ってる。