ベイブレード2009本編
□1-18. 北京へ
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「何かあっという間だったな」
ライが名残惜しそうにそう言った。
「大会、如何しても行っちゃダメ?」
マオは珍しく兄に甘える口調でそう言った。
「駄目だ。冬のうちにやらなきゃならない仕事はお前の得意分野だろう。お前がいないとだな…」
昨夜、何度も繰り返された説教が再び始まろうとするのをレイが止めた。
「またすぐ戻ってくるから」
「…リンも一緒?」
「え」
突然話を振られ、リンは戸惑った。
「リンとエリスは?もう来ないの?」
「それは…」
「来るわよ」
リンの代わりにエリスが答えた。
「私の妹も連れてくる。一緒に遊んであげてくれる?」
「勿論だよ」
「ありがとう」
話がまとまった処で、村の入り口にいつまでも立っている訳にもいかない。
「レイ、美味いもの、土産」
「ガオウは食いものばかりだな」
「キキも、何か面白い玩具を土産にするよ」
「本当か、レイ」
「ああ」
そうして、一行は白虎族の村を後にした。
***
大会は、北京で行われる。
「大会が始まれば一応は敵同士になるんですよね」
マックスとエリスが水を汲みに行っている時、キョウジュが不意に口を開いた。
「そうですね」
珍しく返事をしたのはヴェルだった。
「イリアお嬢様と当たるより先にエリスお嬢様たちがBBAの皆様と当たってしまうと、タカオ様の四連覇は夢と消えてしまいますね」
にこりと笑ってヴェルが言った。
「如何いう意味だよ」
タカオは相変わらず熱しやすい。簡単にヴェルの挑発に乗った。
「タカオ様」
ヴェルが諭すように腰をかがめてタカオの顔を覗き込んだ。
「何時如何なる時も冷静にいる事が大事ですよ」
タカオは瞬きをして、たっぷり10秒、ヴェルの言った意味を考えた。
「非常事態では冷静でいられた者が勝つのです」
「成程。流石はヴェル。いい事を言うな」
レイが言った。
「…皆様方に何かあれば、お嬢様が悲しみます」
「過保護だな」
「カイ様のお宅ほどではありませんよ」
にっこりと笑顔で切り返されたヴェルのセリフはカイを不機嫌にするに足るものだった。帰ってきた時、そんなカイを見て首をかしげるマックスとエリスの姿があった。