ベイブレード2009本編
□1-16. ホワンの里
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「成程。助かったぜ、マオ」
リンが言った。
「…そんな、大した事ないよ…」
マオが一瞬息をのんで、呟くように言った。
「これから先は私たちだけで行ける。世話になったな」
しかしその後に続いた言葉に、マオは傷ついたような顔をしたのをエリスは見逃さなかった。
「良かったら、マオちゃんも一緒に連れて行かない?」
エリスの提案に、リンは驚いたように、マオは弾かれたように顔を上げた。
「ね、リン」
「……私は…」
困ったような、渋るようなリンを見て、マオは笑顔を張り付けて言った。
「いいよいいよ。リンの大事な里を見に行くんだもん。あたしなんか行ったら迷惑だもの」
「マオ…。悪いな」
その謝罪は、マオの言葉を肯定していた。マオはもう一度ニコリと笑顔を作ると、手を振りながら来た道を戻って行った。
「……リン…?」
エリスは少し怒ったような声でリンを呼んだ。呼ばれたリンは居心地の悪そうな顔をしていた。
「行くぞ」
「リン、」
エリスがリンの手を掴んだ。しかしリンは振り返らない。
「何を突然、怒っているの?」
「…何でもない」
「リン、今朝からあまり笑わない…やっぱり、誰もいない故郷に戻るのは…」
「――違う」
リンが、振り返った。
「違うんだ…。案ずるな。村に戻ったら、ちゃんとマオにも…」
「きゃー!!」
その時、劈くようなマオの悲鳴が聞こえた。