ベイブレード2009本編
□1-2. 強化合宿
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「そういえば、大地には会長さん、合宿の誘いをしなかったの?」
タカオの家の庭先で、ベイバトルを繰り広げるタカオ、レイ、マックスを見ながら、ヒロミとキョウジュが羽を伸ばしていた。
「タカオの話だと、仁さんと一緒に今はネパールの方で子供たちにベイを教えているそうです。何といっても天然野生児ですからね、大地は。よほど性にあったみたいです」
「ふーん…タカオのお兄さんも物好きね、大地連れてくなんて」
「昔のタカオに似てるから、扱き甲斐があるみたいなこと言ってましたよ」
ヒロミはその言葉に納得した。
「ごめん下さーい」
「ん、誰だ?」
タカオは練習の手を止めて、玄関に向かった。
「…あ?えーと…?」
タカオが見た事のないような美少女がそこに立っていた。真っ白いひざ丈のワンピース、麦わら帽子、長いラベンダー色の髪に透き通るような白い肌、そして灰色の瞳。
「初めまして。榊那エリスと言います。祖父のお使いでBBAの皆さんにご挨拶に参りました」
戸惑うタカオが声をかけて、レイとマックス、キョウジュとヒロミが庭から回ってきた。くるりと方向転換して、エリスは笑顔を向けると再び自己紹介をした。
「今、榊那って言いました?」
キョウジュが言った。
「知ってるのか?」
「知ってるも何も!大転寺会長から何度かお話を伺っています。BBA復興にかなり助力を頂いているそうで…。ユーリ達、ネオボーグのスポンサーでもある榊那財閥の事ですよ!!」
興奮したキョウジュを諫めて、エリスを中へ通した。
「ありがとう」
居間に移って、タカオはエリスに麦茶を出した。生憎、じっちゃんは町会の会合で出かけている。
「私の祖父は榊那征志郎と言って、大転寺会長とは昔から懇意にしています。会社ではロシアチームのスポンサーを、祖父個人ではBBAに投資させて貰っているんです。あ、これ。つまらないものなんですが…」
エリスはその箱を取り出した。
「ケーキ、私の手作りなのでお口に合うかどうか…」
中には綺麗にデコレートされたショートケーキが入っていた。
「BBAの皆さんがいるとお聞きして、少し大きめのを持ってきたんですが、ご迷惑でしたか?」
エリスは遠慮深げにそう言った。
「まさか!」
レイは力いっぱい首を横に振った。マックスも食い入るようにそれを見ている。
「今日伺ったのは皆さんに合宿先への飛行機チケットを届けるためなんですが、郵送にしなかったのは私のわがままで…実はぜひとも私とベイバトルをして頂きたいからなんです」
ケーキに気を取られていた二人も、パッと顔を上げた。
「世界に通用する皆さんの力を、体験してみたいんです」
エリスは自分のベイをかざして、笑顔でそう言った。
エリスの事は、誰も知らなった。榊那の名前もキョウジュ以外知らなかったのだから、無理もない。そこの孫娘。しかも自分達と年も大きく差がなく、手作りケーキを持参する、見るからにおしとやかそうなお嬢様だ。そしてそのベイに聖獣のビットは入っていない。さて、誰が相手をしようか。
「よし。俺がやろう」
レイが立ち上がった。
「金李だ。よろしく」
「こちらこそ」