ベイブレード2009本編
□1-5. 招待状
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会場に着くと、静かな音楽が聞こえてきた。
「ユーリ達、もう着いてっかな」
「タカオ、頼みますから榊那会長に粗相をしないように頼みますよ!」
意気揚々としたタカオにキョウジュがくぎを刺す。
「それにしても動きにくい…」
「駄目ネ、レイ!ネクタイ緩めちゃ…」
「……。」
「ごめんね、先に言っておけばよかったね」
そう言って、4人はタカオ達の後を追って歩きだして、すぐに後ろからの声に立ち止った。
「カイ、レイ、マックス、エリス!」
「ヒロミちゃん!」
振り返ったエリス達の前に、ピンク色のミニスカートタイプのひらひらとしたレースの付いたドレスを着たヒロミが嬉しそうに手を振っていた。背中には大きなリボンも付いている。
「あれ?エリス、何よそのドレス。ヴェルさんが私の色違いを届ける、って言ってたのに」
「え、ええ…、ちょっとほら、北海道って夏でも結構私には寒いの」
「あんた前、ロシアにいたんじゃなかったの?」
「それはそれよ」
エリスは自分があそこまで抵抗して拒んだドレスを喜々として身につけるヒロミをうまくやり過ごした。
「合宿はどうですかな?」
「すっごく楽しいネ。毎日強くなってる気がするよ」
「感謝しています、会長」
カイも無言でうなずいたのを認めて、会長は満足そうにウン、ウン、と頷いた。
「さぁ、早く中へ入りましょう」
「私は此処に控えております。行っていらっしゃいませ」
ヴェルに見送られて中に入ると、既にタカオがトレーいっぱいの料理をほおばっていた。レイとマックスもそれに続く。
「カイも何か食べる?」
一人壁に寄り掛かってしまったカイに、エリスがバランスよく料理を少しずつ取り分けたトレーを持って近づいた。
「いい。それより、お前の祖父とやらは何処にいる?」
「まだみたい。カイのお父様はいらっしゃらないの?」
エリスが父親の話題を振って、カイは眉間にしわを寄せた。エリスはそれをみてクスクスと笑った。
「何がおかしい」
「だって、その顔…」
昔と全然変わらない、そう言いかけてエリスは言いとどまった。
「あ、これ美味しい。カイもお腹空いているでしょう?」
そう言って、エリスは自分の気に入ったそれをカイに差し出した。にこりと笑って「食べないの?」と言う風に首を傾げるエリスを見て、カイは観念してぱくりとそれを食べた。
「カイの好きな味でしょう?」
「…俺の好みが分かるのか」
「勿論よ。伊達に毎日炊事してませんから。タカオ君たちのも大体は把握してるわ」
その様子をレイたちの横から見ていたヒロミが、盛大なため息をついた。
「如何した、ヒロミ?」
「何でもない…」
乙女の心の葛藤に全く気付く様子もないタカオは、食事を再開した。