うたのおはなし
□彷徨える蒼い弾丸
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…退屈だ。
戦うことの意味もすべてなくした今は、平和に過ぎる日常も間延びした時間にしか過ぎない。
オレはいったい何をしたいんだろう。
テレビではつまらないバラエティ番組。
みたいものなんかない。
やりたいこともない。
これが望んでいた平和なのか?
今日も町は退屈な日常をみなに提供している。
ゆるすぎる状態はまるで無菌状態で飼われた家畜のようだ。
きっとオレ達がいた状況に放り出されたらきっと一分ももつまい。
発狂してしまうだろう。
「あなた…死んだ魚みたいね」
不意に、後ろから声をかけられて驚いた。
・・・・・・・・
こいつ、気配がしなかった…
「あなたくらいの技術をもつ人間が手ぶらで平和ボケしていくのをみるのはつらいわぁ」
にやり。
そいつ―相手は女だった―がわらった。
「アタシと一緒に旅に出ない?」
「あんたと?」
「そう。正確には、アタシと組んで仕事する」
はだけた胸元には、勢い良く飛び出していく弾丸をあしらったタトゥが入っている。
「…決めればいい。アタシは彷徨ってるよりも、思い切り飛び出してみりゃいいっておもったからここにいるの」
女はほほえんだ。
「明日、またここで待ってるわ。それまでに決めてちょうだい」
女は去っていった。
オレは一人考えていた。
女の気配をさっすることができなかったとき、
―このままじゃいけない―
そう思った。
翌日。
昨日の場所にオレはいた。
「くると思ってたわ」
弾丸の女がにやりと笑って手を差し伸べた。
オレは無言でその手を握る。
「よろしく相棒」
女はがっしりと握手した。
「ね。
飛び出してみたくなったでしょう…」
女の胸元のタトゥが、蒼く煌めいたように思った。
飛びだしゃいい
泣きだしそうな心を蹴って
探せばいい
何時か無くした
夢の切れ端を
目が覚めたなら
…僕は、
そして君は、
さまよえる蒼い弾丸…
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