探/偵/学/園/Q
□探偵学園Q第4話
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暑い。
暑すぎる!
何でこんなに暑いの!?
ここはミッションルーム。
決して屋外ではないはずなのに…尋常じゃない暑さだ。
いつもの居場所であるソファーをメグに奪われたあたしは、仕方なく真ん中のテーブルに座って本を読んでいた。
暖炉前のいすには氷嚢を頭に乗せ、うちわで扇ぐキンタ。
部屋の奥には同じく氷嚢を頭に乗せ、パソコンをいじるカズマ。
メグはミニ扇風機に頼っている。
あのクールなリュウでさえ、ハンカチで汗をぬぐいながら本を読んでいる。
あたしはふと彼の読んでいる本を見た。
タイトルは…悪について?
テーブルに置いてあるのは自由からの逃走?
エーリッヒ・フロム好きなのかな?
「おはよぉ!」
キュウが元気よく入ってきた。
手にはかき氷。
部屋の暑さに戸惑っている様子。
「何この部屋?何でこんなに暑いの?」
そう言いながらあたしの隣に座るキュウ。
「クーラーが古くて効かないんだよぉ…。」
キュウの疑問にキンタが答える。
「団先生に頼んで新しいのいれてもらおうよぉ!」
メグがだるそうに言った。
「秋葉のネットアイドルがそんなだらしないカッコしちゃってていいの?」
カズマがパソコンを持ってこっちへやってくる。
あたしの向かい側に座った。
「何言ってんの?」
メグは何の話か分かってないみたい。
「見ちゃったよ、メグのブログ。」
ブログ…?
「え?」
カズマの言葉にあたしとリュウ以外はパソコンの周りに集まった。
リュウは相変わらず本を読んでいる。
「何よこれ!?」
パソコンの画面を見たメグが驚いた。
「メグがブログとは…女ってさ、色んな顔があるって言うけどほんと怖いよなぁ。」
カズマ…ちょっとひどくない?
「あたしこんなの知らないわよ。」
「照れてるし。」
メグはほんとに知らないのかな?
「だから違うんだってば!こんなの作った覚えないもの。」
じゃあ…偽ブログ?
「あ、ねぇ、これ。全部隠し撮りっぽくない?」
キュウが何かに気づいたようだ。
「隠し撮り?」
眉間に皺を寄せるメグ。
「全部目線外れてるよなぁ。」
キンタもキュウの意見に同意した。
「うん。」
「もしかして!」
カズマが何かひらめいた。
「何?」
「メグに憧れてるやつの仕業かも。」
憧れかぁ…。
「どういうこと?」
メグ、ちょっと嬉しそう。
「つまり、メグのようになりたいっていうやつが、メグになりすましてブログを立ち上げたんだよ。ネットの中じゃ自分の理想の女の子になれるからねぇ。でもそれがよりによってメグとは。」
それまで頷きながら聞いていたメグがずっこける。
ナ、ナイスリアクション…。
「え、じゃあ…もう1人のメグがネットの中で存在してるってこと?」
キュウがカズマに聞く。
「自分を捨てて他の誰かに同一化しようとする、病的な心理さ。」
リュウ…話聞いてたんだ?
「こういうやつはエスカレートすると怖いんだよな。」
カズマがぼそっと言った。
「やめてよ気持ち悪い!ねぇカズマお願い、これ作ったの誰かすぐに調べて!」
メグの頼みじゃ断れないよね?
「こっちもメグになりすまして表に引きずり出してやろう!」
頑張って、カズマ!
「しかし…こうも暑いと脳みそとろっとろのやつが増えてくるなぁ…。」
キンタはそう言って元いた場所に戻る。
キュウもあたしの隣に戻ってきた。
「遠山!いい若いもんが何だらけたこと言ってんだ!」
七海先生だ。
今日は普通にドアから入ってきた。
けど
何その格好?
「七海先生…って、どうしたんっすか、その格好?」
あたしの疑問をキンタが口にする。
「今日はちょっとしたデートがあってな。」
自慢げな先生。
「相手誰なんですか!?」
問題はそこだよね、キュウ。
「バラのように美しく、鋭いとがったとげを隠し持つ、怖い女…。」
写真見てる…。
あたしはいすから立ち、写真を覗いた。
「!」
あのキレイな女の人!
七海先生…知ってるの?
「顔と台詞が全然合ってないんですけど。」
メグのつっこみ。
「…あちぃなこの部屋。というわけで、団先生からの新しい指令だ。」
「どういうわけやって…。」
あたしはつい思ったことを口にしてしまった。
みんなの視線が集まる。
「え…あ、あ…DVD見よ!ね!」