探/偵/学/園/Q
□探偵学園Q第3話
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今日もミッションルームは騒がしい。
いつもは真ん中に陣取っているテーブルが部屋の隅へよけられ、キンタがキュウに護身術を教えている。
あたしはいつものソファーに座って本を読む。
隣にはメグ。
リュウは暖炉の前のいすに座って、また分厚い本を読んでいる。
「キュウ、なんだそのへなちょこパンチは!拳が泣いてるぞー?」
キンタが半笑いで言う。
「いや、僕、こういうの苦手なんだよね。」
キュウ…なんか可愛い。
「何甘ったれたこと言ってんだよ。ある程度護身術を身につけておかないとなぁ、お前、この前みたいにまた怪我するぞ。」
「それに、弱い男って魅力ないしねー。ユズの方が頼りになる!」
メグ、それ言っちゃダメだよ!
ほらキュウがへこんじゃった。
「だよなー、お前、何かやってたのか?」
キンタがこっちを見る。
「あー、うん…ちょっと剣道やっとってん。」
あたしは曖昧に答えた。
「剣道かぁ…。」
キンタは納得したように頷いている。
「ねぇ、僕でも出来るなんか…必殺技ってない?」
よほど弱い男が嫌なのか、キュウがキンタに尋ねた。
「そりゃあお前…」
2人でしゃがみ込んでこそこそ喋ってたかと思ったら、いきなり大声で笑い始めた。
「何よ2人でこそこそ。気持ち悪い。」
そう言ってメグが呆れたとき、ミッションルームのドアが開いた。
「ぐっもーにんぐえぶりわん♪」
入ってきたのは上機嫌なカズマ。
今日も花束を持っている。
「カズマぁ、アンタまた花買ってきたの?」
あたしは呆れて何も言えなかった。
「部屋も明るくなるし、優雅で良いじゃないか!」
そう言って部屋の奥に進むカズマを追うメグ。
キンタ、キュウ、リュウも後に続く。
「てゆうか、はっきり言って邪魔なんですけど。」
メグがズバッと言った。
そう、ミッションルームの片隅には花束の山。
ぶっちゃけ置く場所がなくて困ってるんだよね。
「まぁ、メグには分からないかもね。花に囲まれて生活するこの豊かさってものは…。」
カズマってば…ナルシストみたい。
あたしは本に目を戻した。
「甘いぞ鳴沢!」
…七海先生の声だ。
今日はどこから来るつもり?
あたしはあえて本を見たままでいた。
「ミッションインポッシブル!だよ☆」
…今日は呆れてばっかりだ。
あたしは顔を上げた。
妙な格好で天井からぶら下がる先生が目に入る。
「見れば分かりますよ。」
先生の横をすり抜けながらキュウが一押し。
「あれ?」
「てゆうか、何でふつーに現れないんすか?」
反対側からキンタ。
「俺の趣味なんだよ、悪いかお前。ちょ、止めろよこれ!」
「開き直ってるし。」
次はメグ。
「ちょちょちょちょ、止めて止めて誰か!」
「さすがです七海先生。」
リュウまでもが先生を押した。
「お前らそんなたるんだ気持ちでなぁ!一人前の探偵になれると思ってるのか、おい!ちょっと、誰か止めろ!」
これが一人前の探偵がすること?
あたしがそう思っていると、カズマが一歩前へ進み出て先生を止めた。
「うおっと…お、お前、ありがとう。」
一輪の花を差し出すカズマ。
「何だ?」
先生は意味が分からない様子。
「何でもありません。」
カズマはしれっと言った。
「そんなわけで、団先生からの指令だ。」
先生はどこからかDVDを取り出した。
どんなわけだよ。