GIFT

□放課後の片隅、ヒミツの時間


『放課後の片隅、ヒミツの時間』




A4の補習用のテキストを持って、放課後、真奈美は生徒会室に向かった。

「慧くん、いるかな?」

ノックをして、ドアを開く。
補習の進め方について相談したいと思って、慧を訪ねてきたのだが。

「…あらら」

確かに生徒会室に慧はいたのだが。

そこには彼だけがいて、他の生徒会のメンバーはいなくて。

一人で生徒会室にいる慧は、いつかのように、机に伏せて眠ってしまっていた。

「……」

音を立てないようにドアを閉めて、真奈美はそっと歩み寄る。

こうして机に向かって眠る慧を目撃するのは、これで2度目になる。

“疲れてるんだな…”

真奈美は慧の前の椅子に座って、そっと彼の寝顔を見た。

それは、まさに戦士の休息。

彼を起こしてはいけないと思いながら、真奈美は、つい好奇心を抑えられなくて、おそるおそる手を伸ばした。

彼の髪に、こっそり触れてみる。

“わぁ…”

それは、想像していたよりもずっと柔らかくて、さらさらと真奈美の指をすべった。

「いいなぁ…羨ましいなぁ」

思わず声に出して、真奈美は更に大胆に慧の髪に触れる。

「キレイな髪…洗ってみたいっ」

言ってから、真奈美は自分の発言に照れた。

「……あの、ヘンな意味じゃなくてね…」

自分で自分に言い訳をして、真奈美は顔を赤くする。

一度、触れてみたかった慧の髪は、本当に触り心地が良くて。
真奈美は何度も、彼の髪を指に絡めて弄んだ。

“どんなシャンプーを使ってるんだろう…聞いたら教えてくれるかな…”

教えてもらった所で、真奈美が同じシャンプーを使っても、こんなにキレイなストレートになるわけはないけれど。

「持って生まれたものかぁ。羨ましいな…」

呟いて、慧の額をそっと、つつく真似をする。

「男の子なのに…羨ましいぞ?」

さらさらして、何度触っても飽きない慧の髪を、指に絡めてはすべらせて。

真奈美はすっかり慧の髪に夢中になる。





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