VitaminX
□約束
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悠里のもとに宅急便が届いたのは、まだ寒さの残る季節。
「聖帝学園からだわ」
悠里は丁寧に箱を開けて、中を確認した。
「これ…」
送られてきたものに懐かしさを感じて、悠里はそれを手に取った。
同封されていた学園からの手紙に目をやると、校舎の一部を建て替える工場の事が書かれていた。
「あの時のタイムカプセルだわ」
悠里は手にした一冊のファイルを開き、中を見る。
あれは、もう5年前になる。
卒業を間近に控えた、当時の教え子たちと一緒に、タイムカプセルを埋めたのだ。
確か、悟郎の提案だったか。
始めは子供じみていると言っていた仲間たちも、思い出の品を持ち寄って。
「懐かしいな…」
悠里は、自分がタイムカプセルに入れたファイルを見ながら、当時の事を思い出した。
ファイルの中身は、B6と呼ばれていた彼らの成長記録。
懐かしいと言いながら、悠里は彼らの事を1日だって忘れた事はない。
「本当に問題児だったもの。苦労したなぁ」
4月、初めて彼らに会った時からの事をファイルを見ながら思い返す。
勉強、勉強と言いながら追いかけまわした日々。
それでもみんな、ちゃんと卒業してくれた。
ついて来てくれた。
卒業式の日には、1人1人、名前を呼ぶ事ができた。
そんな卒業式の少し前、6人が埋めるタイムカプセルに、先生にも何か思い出の品を入れてほしいと言われ、このファイルを入れたのだ。
5年近く前だというのに、昨日の事のように思い出す。
思い出すのは、はちゃめちゃな彼らの笑顔ばかり。
「…そっか、学園の建て替え工場が…。だから、掘り出されちゃったのね」
学園からの手紙によると、タイムカプセルの中身は、それぞれの持ち主の所へ送られたとの事。
「みんなで集まって掘り出して、みんなで見ようって約束…ダメになっちゃったわね」
こんなに早く、このファイルと再会するとは思わなかった。
少し残念で、でも、それは仕方なくて…。