VitaminZ

□half&half
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乾杯は、よく冷えたオレンジジュースとコーラで。




「誕生日おめでとう、慧」
「誕生日おめでとう、那智」

合わせたグラスが、小さく音を立てた。

「お酒で乾杯ができるまで、あと2年か」

20歳の誕生日には必ずワインで乾杯しようねと言って、那智はコーラをのんだ。

実際、今日だって、少しくらいいいじゃん…と思っているのだが。

未成年者の飲酒が法律で禁止されている以上、慧を前にしてそれはないなと諦めている。

「ま、これで18禁は解禁になったという事で…」

あと2年くらい、20禁のものを我慢するくらいはね〜と那智が笑うと、慧はオレンジジュースをふき出す勢いで咳き込んだ。

「那智…高校を卒業するまでは駄目だ」
「やだなぁ慧、顔が赤いよ? 大丈夫、今すぐあれやこれに手を出したりしないって」

“あれ”や“これ”が何なのかはともかく。

慧は広げられたお菓子の山に目をやって、眉を寄せる。

「それより、那智。こんなに一度に食べきれるのか」
「ん? 残ったら残ったでいいよ。せっかくの2人のバースデーなんだからさ」

美味しいよ、と那智にすすめられたスナック菓子に、慧はとりあえず手をのばした。

「…今年も、こうして慧と誕生日パーティーができて嬉しいよ」
「僕もだ、那智」

パーティーといっても、買い込んできたお菓子を2人で食べるだけなのだが。

大事なのは、2人で、という事。

「…来年辺り、慧が危なそうだなぁ。恋人ができてさ、“すまない那智、誕生日は彼女と…”とか言いそうで」

さくさくと、スナック菓子をつまみながら那智は愚痴る。

「それを言うなら那智の方が可能性は高いだろう。“兄さんごめーん、誕生日は彼女と…”などと言われて置いていかれそうだ」
「え〜、今のってもしかして、おれの真似?」

似てなかったよ〜と論点をすり変えて、那智は笑う。

「……」
「……」

しばし無言でお菓子を黙々と食べて、2人は暗黙の了解で、来年の、そして再来年の誕生日の予約をする。

例え恋人ができても、この日は兄弟でお祝いできるように。

まだいない未来の彼女には悪いが、彼氏の誕生日のお祝いは、1日かそれ以上、ずらして祝って下さい、と。

「…………慧。もしかして今、おれと同じ人の事を考えた?」
「……?」
「あ、まだ自覚はない…か」
「何の話だ?」

慧が不思議そうに問いかけてくるので、那智は何でもないよーと言って、またスナック菓子に手をのばした。
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