VitaminZ
□half&half
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「おれ達、2人の特別な日だからね」
「…そうだな」
18年前の、おそらく暑かっただろうこの日、2人は2人で生まれてきたのだ。
「………漠然とさ」
ポテチをつまみながら、那智はひとり言のようにつぶやいた。
「双子で、後から生まれたおれは、必要なのかって思う事があるんだ」
「那智…」
「…実際、親が望むのは最初は1人だろ。予定外についうっかり一緒に生まれてきちゃった弟は、どうなのかなって」
慧が、ものすごく真剣な顔で那智を見ているから。
那智は思わず、ポテチを兄の口につっこんで、笑った。
「…そんな顔するなよ。別に、おれは何のために生まれてきたんだろうとか、生きてる事に意味はあるのかとか、そんな事を常日頃から考えてるほど暇じゃないから」
にこやかに、いつもと変わりなく笑う那智に、慧は少し安心する。
「…ポテチ美味しい?」
「ん…あぁ」
慧は弟のグラスにコーラを継ぎ足して、彼と目を合わせた。
「僕は、那智と一緒に生まれてきて良かったと思っている」
「そう言ってくれると嬉しいよ、慧」
「……もちろん、自分で望んだ覚えはないが。たぶん…いや、間違いない、覚えていないだけで、僕も那智も、望んで、選んで共に生まれてきたんだ」
「……」
慧が、あまりに自信満々で言い切るから。
何だか本当にそんな気がして、那智はお菓子に手を伸ばすのも忘れて、共に生まれて共に育ったその人を、改めて見つめた。
その顔はとても似ていて、けれど、同じものではない。
一緒に生まれて一緒に育った、2人。
方丈慧という、方丈那智とは別の存在。
だから、愛しいと思う。
「そうだね。慧が言うならそうかな〜。おれも自分でそう決めて、生まれてきたんだよ。…覚えてないけど」
コーラの入ったグラスを手に、那智は答える。
ジュースは何がいいと相談すれば、オレンジジュースとコーラで意見は分かれて。
とても似ていて、こんなにも違う。
彼の弟がいいと、きっと自ら選んで、だから今、彼と一緒に向かい合って、他人には全くどうでもいい日の7月22日(水)を祝っているんだと思う。