VitaminX

□幸せの白いしっぽ
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今までの彼は、人間の体温が嫌いだった。

今ならわかるよ。
瑞希くんは体温が嫌いなんじゃなくて、本当の幸福を、ぬくもりを知らなかったから。
それがどんなものかわからなくて、怖くて、避けていたんだね。

本当は誰より、ぬくもりを欲しがっていたんだ。

大丈夫だよ。
瑞希くんは1人じゃないよ。
ご主人様を傷つけるものから、ボクが守ってあげる。

それが“孤独”なら、ボクが1人にさせない。
ボクはずっと一緒にいるよ。
今までも、これからも。


「あら、やっぱり仲良しね」

電話を終えた彼女が戻ってきて、瑞希くんのすぐ隣に座った。

「いらっしゃい、トゲー」

彼女がボクに手を差し出す。

ボクは、瑞希くんの恋人になったこの人の事も、大好きだった。

優しくて強い人。
ご主人様に、この世界で生きる事の素晴らしさを教えてくれた人。
瑞希くんを変えてくれた人。

「トゲーも幸せ?」

手のひらに乗ったボクを撫でて、彼女は問いかけてくる。

「トゲー!」

もちろんだよ。
大好きな人の側にいて、瑞希くんは幸せ。ボクも幸せ。

この気持ちが、伝わるといい。

「……ん」

瑞希くんが微笑んで、彼女も微笑んだ。

「…私も、一緒にお昼寝しちゃおうかな」

彼女はそう言って、瑞希くんの隣にころんと横になった。

ゆっくり流れる時間。
ずっと続く時間。

ボクは瑞希くんと彼女の間で、しっぽを丸めて円をつくって、一緒に目を閉じた。






ボクが、とっても可愛い白いトカゲに出会ったのは、それからすぐの事。

ねぇ瑞希くん。
ボクの大切なご主人様で、ボクの大好きな親友。

ボクはあなたと同じ、恋を知って、この世界をもっともっと愛するようになって、生きる事が楽しくて、幸せ。

恋を知ったボクは、あなたのようにキラキラ、輝いていますか?



-end-
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