□その3
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午前2時。

溜まった書類を片付けていたら、すっかり遅くなった。
間違いなく、アイツは寝ている時間だ。

『…ただいま、だぞ、と』

それでも、習慣で零れる言葉。
寝ているアイツを起こさないように、小声で。

だが……

『おかえり、レノ』

予想に反して、返って来た声。
俺が開ける前に、リビングのドアは開いた。

『遅かったね。お疲れ様』

これ以上ないくらい眠そうに、目を擦りながら。
玄関に出てきたオマエが言う。

『あ、あぁ……寝てなかったのか、と』
『うーん…あんまり眠く、なかったから…』


……嘘付けよ、と。


思わず、オマエの体をそっと抱き締めた。

『そっか眠くないか、と。でもレノさんが帰ってきたからなー。一緒に寝ましょうね、と』
『ふふっ…はーい、と』

俺の口癖を真似て、腕の中で、オマエの体が揺れる。

『よしっ。じゃ、ベッドに移動だぞ、と』

そのまま、抱き締めていた体を抱き上げる。
腕の中でオマエはちょっと甘えるみたいに俺の肩に頭を乗せた。


『……本当は、ね…今日は一緒に寝たかったの……レノと』


思わず……顔を、覗いた。
オマエは顔を見られないようにか、俺の肩にぐりぐりと顔を押し付けている。

だが……それは耳まで、赤い。

俺はその、赤い耳に、そっと口付ける。

『そっか、と。それは光栄の極みだぞ、と』



だが、な。

そんなふうに言われたら……


『ベッド到着ー、っと♪』
『うん♪じゃー、レノ、おやす、み……ん?……レノ!?おやすみ、だよっ!!』


寝かせられなくなるのが、男ってモン、だぞ、と。

おネムなところ悪いんだが……

『レノっ!寝ーるーのー!!!』
『だーめーだーぞー、と♪』

今夜は大変な事になるぞ、と。




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