恋
□願い事
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同日 夜。
書類の整理等が終わり、隊員達に挨拶を済ませ、七緒は隊舎を後にした。
今日は良く晴れていて、天の川がとても綺麗だ。
そんなことを考え、あの笹のところまで来ると目の前に春水がいた。
「隊長……?」
「やぁ、七緒ちゃん」
春水の服装は夜でもよく目立つ。
ピンクの羽織が外灯に照らされ、淡く輝いているように見えた。
「どうなされたのですか?」
「いやぁ、ちょっとね……」
春水は言葉を濁すと、「あ、そうそう」と言い、小さな包みを取り出した。
「はい、七緒ちゃん」
「……何ですか?」
「今日、誕生日でしょ?プレゼントだよ」
にっこりと微笑まれて、顔が朱に染まったのを見られないよう、小さく「ありがとうございます」と言い、包みを受け取った。
「開けてもよろしいですか?」
「もちろん」
そっと開けてみると、中身は綺麗な髪飾りだった。
「これは……」
「この短冊、七緒ちゃんが書いただろう?」
春水が指し示したのは、昼間七緒が願いを書いた短冊。
「これを私に渡すためにわざわざ?」
「まあ、そういうことだよ」
照れ隠しなのか、春水は笠で顔を隠した。
その時に「本当はそれだけじゃないけどね」と、小さく唇が動いたのに、七緒は気付かなかった。
「……帰ろうか、七緒ちゃん」
「そうですね」
綺麗な髪飾りを大事に握りしめ、七緒は春水と帰路についた。
(『七緒ちゃんが、僕に少しでも振り向いてくれますように』)
「これは、僕の願い事」
END
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