□存在美化
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ひらひらと宙を舞う花弁。

風に逆らわず、ただただ散っていくだけの花。


「綺麗だな」


気が付くと言葉が漏れていた。目の前の光景は本当に美しかった。

桜の木を見上げ、舞い踊る花弁に目を奪われている少女。

とても絵になる光景だった。


「ホント、綺麗だよね」


目の前の少女が振り返り、サスケを見据えた。

硝子の様な目に見られ、気まずさからサスケは目をそらした。


「でもすぐに散っていくだろ、花なんて」

「……そうだね、ほんの少ししか咲けないからこんなに綺麗なのかな」


少女は、それとも、と言葉を区切り、地面に視線を落とした。


「犠牲の上に成り立ってるからなのかな」

「犠牲?」

「だって」


そこで言葉を区切り、地面に落としていた視線をサスケに向けた。


「桜の木の下には、人間が埋まっているんだよ?」


あぁ、とサスケは思い、目を閉じた。
この少女は自分と同じなのかもしれない。
何かを犠牲に、自分を成り立たせているのかもしれない。


「だけど」


だけど、今日くらいは。


「これだけの数の木の下に、死体があってたまるか」


少女は意表をつかれたような顔をして、ふわりと微笑んだ。


「そうだね」



(今日くらいは、自分の存在を美化しても)


「綺麗だな、桜も――」


Thank you for 1st anniversary!!



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