恋
□ただ、その一言を
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「そういえば」
雨竜がそう言って、鞄の中を探る。
どうしたのだろう、と思い雨竜が次の言葉を待った。
「井上さん、誕生日おめでとう」
その言葉と同時に、雨竜は手に乗った小さな、包装された袋を差し出した。
「これ……」
「昨日有沢さんが、明日は井上さんの誕生日だ、って教えてくれたんだ。」
「たつきちゃんが……?」
「だから、プレゼントだよ」
そう言って微笑む雨竜。
今度は嬉しさで顔が歩く染まる。
「ありがとう、石田くん」
「いや、せっかくの誕生日、やっぱり祝ってほしいからね」
眼鏡をくいっと直す。
その仕草が照れ隠しなのを知っている。
「開けてもいい?」
「もちろん」
袋を丁寧に開け、中身を見るとひとつのブレスレットが入っていた。
「かわいい……」
きっと、昨日帰ってから何がいいか悩んで、女物のかわいいお店に入って、恥ずかしい思いをしながらも、これを買ってくれたんだ。
そう考えると、すごく嬉しくなった。
「大事に使うね!」
「気に入ってくれたなら、よかったよ」
「……ありがとう、石田くん」
「どういたしまして」