恋
□そのままの君で。
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*そのままの君で
「ねぇ、ギン」
「……なんや、乱菊」
いつもあんたは、笑ったままで
「本当のあんたって、どこ?」
「唐突やね」
あたしにも、他の誰にも本当の顔を見せてはくれないのね。
「本当のボク、ねぇ……さあて、どこにあるんやろ」
何を言ってもスルリと逃げられる。
――すごく、もどかしい。
「誤魔化さないでよ」
「そんなことあらへんよ」
「……そう」
短く溜め息をつき、酒を注ぐ。
「また昼間から飲んで……十番隊長さんに叱られるで?」
「いいのよ、別に」
「……ほな、ボクはそろそろ帰らな」
そう言って、ギンは立ち上がる。
別れるときでも、表情は変えないのね。