□消えない。
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「それはコイだな」

「……コイ」

阿近さんに聞いてみたら、聞きなれない言葉が返ってきた。


「あの、池などで泳いでいる……?」

「それは鯉だろ」


では、コイとは何のことでしょうか。


「コイっていうのは、恋のことだよ」


紙にその漢字を書いて、私に見せてくださる阿近さん。


「……恋」


「今度、話しかけてみればどうだ?」


「……はい、ありがとうございました」


お礼を言って、外に出る。
その足で十一番隊の稽古場に行く。
そこでは丁度稽古が終わったようで、暑そうにした斑目三席が汗を拭いながら出てきたところだった。


「暑いなァ……」


「あの」



つい声をかけてしまい、斑目三席がびっくりしながら振り返る。



「なんスか?……涅副隊長」

「……タオル、使ってください」

「え?あー、ありがとうございます……?」

「失礼します」

「え?ちょっと!」


斑目三席が呼んでいるのを気にせずに稽古場が見えない所まで走る。

胸が高鳴る。

走ったせいではない。

斑目三席と話しただけで


「……私の、胸に」



(恋という、消えない毒が)


END


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